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第7話 ページ8

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瞬間に、コートの端から端へ駆け抜ける一匹の烏。

誰にも追いつけない速さで走って、飛んだ彼の手の先には



影山が放ったボール。



ばし、と小気味のいい音を立てて、日向君がボールを打ち切った。




『…なにこれ、すご……』


「!! な?凄いだろ、あいつら!」



潔子さんを挟んだ向こうからスガさんにそう言われ、勢いよく頷く。

…正直な話、今回の練習試合の条件に影山を正セッターで出すというものがあったときは、スガさんに同情してしまった。3年生で、元々正セッターなのはスガさんだ。

けどこの人は、凄い実力を持った1年生をこんなに嬉しそうに、自分のことかのように自慢してくる。私なんかが同情したのも、失礼な話だったのだ。



***



3セット目終盤で及川さんが戻ってきて、1年生がサーブで狙われて、危ない場面もあったけれど、なんと県で4つの指に入る青葉城西に勝ったのだった。

帰る支度をすべて終え、青城の校舎に背を向け歩く。
隣で荷物を半分持ってくれた縁下と話しながら歩いていると、正門にもたれて突然話しかけてきたのが一人。

及川さんだった。



話を聞いていると、及川さんはうちを引っ掻き回したいだけみたいだ。さっきからいい塩梅にむかつかせることを連発している。



「レシーブは一朝一夕で上達するモンじゃないよ。
…っと、本題はこんな話じゃなかったんだっけ。



……A、話したいんだけど」

『っ、!』



こっちに降りかかると思っていなかったのに、突如名前を呼ばれて肩が震える。



「A、?」

『……』



縁下に声をかけられるけど、顔を上げることもできなければ声も上ずって出てこない。



「…――――――大地さん」

「!

悪いな及川、帰ったらすぐ練習だし、先生も待っているから時間がないんだ。


それと、

“烏野”のマネに、あんまりちょっかいかけないでやってくれ」




大地さんの方が前にいるから表情は読み取れないけど、いつも以上にその背中が大きく見えた。




「…。

じゃあ、せいぜいグズグズレシーブの練習、頑張ってね。
大会までもう時間はない、どうするのか楽しみにしてるね」



及川さんは捨て台詞をはいて、背を向け体育館へと戻っていった。


一気に緊張の糸が解けたように力が抜けて、足が進まなくなる。

すると横から手が伸びて来て、縁下の優しくて大きな手が、頭を撫でた。
私が持っていた残りの荷物を、久志と成田が持ってくれた。

ひとつひとつに、“心”があった。

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ふぃる(プロフ) - あかねさん» コメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉…!!のんびり更新ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします(^^) (2020年3月12日 13時) (レス) id: 57a4697fd9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - めっちゃ好きです。このお話読んでふぃるさんのファンになりました笑これからも応援してます!! (2020年3月2日 8時) (レス) id: 012863f737 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふぃる | 作成日時:2020年2月7日 11時

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