月夜 百三十五夜目 ページ14
「はぁ……はぁ……あ、あれ、遊作君……？え、な、何で此処に……？」
暫くして、呼吸を整えながら周りを見渡した亜理子の目に、遊作が漸く入った様だ
「……やっと、落ち着いたか……。俺は、浅葱にプリントを届けに来たんだ。そしたら何かが壊れるような音がしたから……」
「そ、そうでしたか……す、すみません、それ、多分私がマグカップ壊しちゃった音です……。私は、その……未月ちゃんの生活用品を回収しに……。未月ちゃん、今ちょっと離れた所に居るので……」
あ、届けに行くついでに、そのプリントも渡しておきますね……。と細く白い手が遊作の手に握られたプリントへと向かう。だが、遊作は腕を頭上にあげ、そう簡単に取られないようにした
「待て。……一つ聞きたい。何故、お前はインターホンに反応しなかった？」
「そ、それは、マグカップが壊れて、あたふたしてたから……」
「マグカップが壊れた音がしたのは俺がインターホンを押してから暫くしてから、だ。……無視したのは、此処に居ることに、罪悪感を覚えたからじゃないのか？」
「そ、そんな！酷いです……無茶苦茶じゃないですか！そんな証拠、どこにあるって言うんですか！？」
「なら、俺を浅葱の元へ連れていけ。そこで、浅葱にお前に生活用品を持ってくるよう頼んだのか聞けば良い話だ」
「そ、それは……その……」
……亜理子はハノイの騎士によって誘拐されたとされる、PANDORAプロジェクト関係者だ。そんな彼女が、同じくプロジェクト関係者であるかもしれない未月の部屋に侵入している。怪しい以外の何者でもない
「と、とにかく、私は、別に何か悪さをしようとしたわけではないんです！み、未月ちゃんの役に立とうと、していただけなんです！信じてください！」
「……残念だが、信じられないな」
「な、なんでですか！？わ、私がゴミ虫だからですか！？それとも未月ちゃんが嫌いだからですか！？」
「なら、せめてこれだけは教えろ。……お前がそこまで浅葱に拘るのには、十五夜未月が関係しているのか？」
その瞬間、亜理子の震えがピタリと止まった
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作者名：瑠伊亞 | 作成日時：2019年5月18日 21時
