10 ページ10
「この鎖のことなら……
異能力とか、超能力って意味なの？」
死柄木は思わず彼女をまじまじと見た。
彼女の『物の性質を変化させる』個性なら、
ここに連れてきた時にすぐ逃げることができたから、
記憶を無くして自分の個性が覚えていないのは
推測していた。
彼女の記憶を飛ばした敵は『記憶を無くす』個性だ。
しかしどの程度、故意に特定の記憶を消すことができるのかまでは分からなかった。
もし記憶を選択的に消せるなら、
『個性の存在』自体を消せば、抵抗されない。
＿＿＿＿その記憶を無くす個性持ちも、
案外彼女を狙っていたのかもしれない。
死柄木が悶々と考えていると、彼女が俺の袖を掴んだ。
「死柄木さん……？」
黙ってしまった俺を不安そうに覗き込む。
鎖を崩したばかりの手で頬を撫でても、
彼女はむしろ居心地良さそうに擦り寄ってくる。
怖がれてはいないことに、息を吐いた。
「『ヒーロー』も『敵』知らないの」
彼女は頬に触れている俺の手に優しく触れながら、
困ったように首を振った。
「……わからない…ごめんなさい」
死柄木ぎ余程深刻そうな顔をしていたのか、
不安そうに謝る彼女の額に、口付けた。
「心配ない、説明してやるから」
彼女に向かい合う形で、それからいくつか質問した。
聞き覚えの無い単語、覚えている単語をひとつずつ確認していくうちに分かった。
ある程度の一般常識は問題ない。
「信号」も「お金」も理解している。
記憶がごっそり抜けているのは、
『個性』に関すること、それにまつわる社会常識、
そして彼女の過去のこと。
もし記憶を消す個性持ちが彼女を狙っていたのなら、
『個性』の記憶を無くして抵抗させず。
『ヒーロー』の記憶を無くして助けを呼ばせず。
『敵』の記憶を無くして、
自分を「良い人」と刷り込ませようとしたのかもしれない。
事実、死柄木が今やっていることを。
彼女が自分以外の誰かに狙われていたかもしれない。
自分以外に触れられて、喜んでいたかもしれない。
＿＿＿＿腹が立つ。
苛々してむしゃくしゃして、胸の奥がぐちゃぐちゃだ。
ソイツを殴って潰して蹴って斬って刺して壊して＿＿＿＿
「っあ"……！死柄木さん！」
ビキ、と音がした。
気付いた時は、遅かった。
俺は彼女の腕を掴んでいた。
包帯の巻いていない、五本指で。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 871人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華羅夢(プロフ) - ぽいぽいさん» 何ですって！！ぜひ死柄木くん推しになってくださいな！！彼は魅力的な男です！！コメント嬉しいですありがとうございます････！ (2021年9月19日 8時) (
レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - この作品で死柄木くん推しに傾きつつある…好きです応援してます頑張ってください!（ノンブレス） (2021年9月19日 7時) (レス) id: 1142a6ee8a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - れのまるさん» うわああありがとうございます･･････！コメントが1番のモチベになるのですごく嬉しいです！頑張りますね！ (2021年9月14日 14時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
れのまる - 死柄木さん最推しなのでこの作品めっちゃ好きです…！これからも応援してます！ (2021年9月14日 7時) (レス) id: ce403bbca4 (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - しいたけさん» しいたけさん、もしかしなくても2回目のコメントですか･････････？コメント来るのが1番嬉しいので、大喜びで話を書いてしまいました！楽しんで頂けて何よりです！！ありがとうございます！ (2021年9月11日 10時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年8月23日 1時
