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海に近い廃墟の群れ。
その建物の一つの屋上に、人影がいくつかあった。
「お、来たぜ」
荼毘が双眼鏡を覗きながら言った。
彼女を乗せた車は予想していた地点通りに向かっていく。
「お前のヒロインサマ」
隣に座り込んでいる死柄木に向けて言った。
だが皮肉に対するいつもの反応は無かった。
「……A……、」
死柄木は愛おしそうに彼女の名前を呟き、
じっとその車を見詰めている。
片耳にはイヤホンがある。
彼女の制服にしかけた盗聴器だ。
耳障りな男の声も、
とむらくん、と彼女が名前を呟くだけで掻き消される。
その目は、異常なくらいにうっとりと細められている。
荼毘の皮肉さえ耳に入らず、
こいつ頭いかれてんな、と荼毘は顔をしかめた。
ノイズの走るトランシーバーを口に寄せる。
「……イカれ野郎、そっちは」
『トガですよ荼毘くん！
10分後ですよね！全然間に合います！』
端末越しに楽しそうな声が返って来た。
『Aちゃんに会いに行けなかったので楽しみです！荼毘くんは会うの初めてですよね』
「興味ねえよ。
大体何で餓鬼1人にこんな手間暇かけるのか」
「餓鬼じゃないAだ」
死柄木が荼毘を睨む。
はあ、と荼毘は溜息を吐いた。
「んじゃあそのAが」
「気安く名前呼ぶなよ殺すぞ」
「……」
じゃあどうすりゃ良いんだ、と荼毘は溜息を吐いた。
「お、死柄木。お嬢さんが来たのかい？
三日三晩野宿で待った甲斐があるね」
コンプレスが顔を出す。
「いやはや、情報屋の買収には骨が折れたね。
まるで息子の様に可愛がってるなんて言うから、」
やれやれ、とコンプレスは肩をすくめた。
しかし楽しそうに笑っている。
「結局は買収されたんだろ。
言い訳にすらならねえな」
荼毘が双眼鏡を覗いたまま言う。
「しかしこんなに上手くいくもんなんだな。
『誘拐犯がまた攫いに来る』だなんて情報で、
今まで姿形見えなかった奴が釣れる」
「まあ釣れるまでに1週間かかったけどね」
「それにしても、良いのかぁ？
記憶操作ならリーダーの記憶ごと消されても」
「そうなったら、リセットされるだけだ。
またコンテニューすれば良い」
死柄木は言った。
「奪われて、忘れても、
俺は何度もAを俺のにする」
愛しているから。
此方に向かってくる車の中に、
愛しい彼女は居る。
その遥か後ろから迫ってくる、
ヒーロー達の姿も、死柄木は想像出来た。
舞台は整った。
もうすぐだ。
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華羅夢(プロフ) - ぽいぽいさん» 何ですって！！ぜひ死柄木くん推しになってくださいな！！彼は魅力的な男です！！コメント嬉しいですありがとうございます････！ (2021年9月19日 8時) (
レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - この作品で死柄木くん推しに傾きつつある…好きです応援してます頑張ってください!（ノンブレス） (2021年9月19日 7時) (レス) id: 1142a6ee8a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - れのまるさん» うわああありがとうございます･･････！コメントが1番のモチベになるのですごく嬉しいです！頑張りますね！ (2021年9月14日 14時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
れのまる - 死柄木さん最推しなのでこの作品めっちゃ好きです…！これからも応援してます！ (2021年9月14日 7時) (レス) id: ce403bbca4 (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - しいたけさん» しいたけさん、もしかしなくても2回目のコメントですか･････････？コメント来るのが1番嬉しいので、大喜びで話を書いてしまいました！楽しんで頂けて何よりです！！ありがとうございます！ (2021年9月11日 10時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年8月23日 1時
