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『ごめん待たせた!行こう!花火!』
「え、あ、うん。電話、大丈夫だったの?」
『大丈夫だった!』
ぜえはあと荒い息をして詰め寄る私の頭にジスくんはびっくりしながらもタオルそっと掛ける。
「急いで来てくれたのは嬉しいけど、汗ちゃんと拭いてね。風邪ひいちゃうよ」
『あ、ありがとう』
ふ、拭けない。ジスくんの匂い100パーセントの綿100パーセントのタオルで顔なんて、ましてや汗が止まらない脇なんて拭けない。
とりあえず拭いたふりをしておく。
「ふふ、ちょっとAちゃん。全然拭けてないよ」
やはり分かりやすすぎたのか。
空を切っているタオルをジスくんは掴み、私の顔をポン、ポン、と傷つけないように拭いていく。
ジスくんの匂いとジスくんの手の感覚がタオル越しに感じられてこの場に居たいけど居たくなくなる。
なんでこんなに、心臓をわしづかみにするのだろう。
できるだけジスくんの方を見ないようにして歩いていたら目的の小さな公園に辿り着いた。
誰もいない静かな公園のベンチに座る。
ジスくんの隣にコンビニの袋をおいて、その隣に私が座る。
少し距離が遠くなってくれて良かった。少しは心臓が楽になってくれる。
ジスくんが買ってくれた飲み物を飲みながら花火を見る。
「うわあ、今の魚の花火綺麗だったね」
『ね、綺麗。魚じゃなくてウサギだったと思うけど』
「え〜?うそだ〜!」
2人きりの空間っていつぶりだったかな。すごく懐かしく、そして新鮮だ。
ジスくんも同じことを思ってくれていたらいいな。
実ることのない私の彼への想いの中のこの空間は、ただの気休めの一つかもしれないが確かに幸せを感じれている。
これも全部、後押ししてくれたミンハオのおかげだ。
ドン、
『……あ』
「え?」
私がそう思った瞬間、一つの花火玉が打ちあがった。
緑色の可愛らしいシルエットに包まれた、カエルの花火。
こちらを微笑んでゆっくりと散っていったカエルは、まるでミンハオが「良かったな」と言っているように思えた。
ミンハオもとい、カエルの微笑みにつられて私も口元も綻ぶ。
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るちこ(プロフ) - ああああああああハオちゃんんんんんんんんんちゃんんんんんんんんん (11月10日 4時) (レス) @page46 id: c87158ddcc (このIDを非表示/違反報告)
ゆずちゃ(プロフ) - え、最高すぎないんか、ほんとてんさい、はあ、もう余韻が、ありがとうございます。 (6月17日 23時) (レス) @page46 id: 431dcc5ea7 (このIDを非表示/違反報告)
ここここ(プロフ) - 伏線回収やばすぎて鳥肌でした…一気読みしてしまいました…楽しすぎました…主最高ですありがとうございました (5月21日 13時) (レス) @page46 id: 4b95013bd6 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - こんなに素晴らしい物語は初めてだ!! (2022年10月17日 20時) (レス) @page46 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
ぢゃぬん - ハオが‥純愛すぎて‥文字だけなのにむっちゃ照れました‥!神です‥ (2022年9月25日 22時) (レス) @page46 id: 6ab475b0f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sumi | 作成日時:2018年3月10日 0時