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謙也とはじめまして(2/2) ページ4

家に到着して勉強机の引き出しを開ける。そこには3つ折りにされた沢山のメモが無造作に仕舞われていて、その中にまた一つ、メモを追加した


一目惚れやった。人生ではじめてのナンパをしてしまうくらいには、何かがかち合ったのだと思う

1回目は上手くいった。俺のヘタレぶりに彼女は大爆笑していて、不本意だが成功した。LINEを交換しようと思ったが彼女はケータイをもっていなかった。今どき珍しいと思ったが未成年やしそういうもんなのかとも思った

2回目は大失敗だった。正直ショックだった。何せ彼女は俺のことを全く覚えておらんかったのだから

家電で、彼女の親と話す機会があった

短期記憶喪失。彼女は三年前の高校時代、土曜日やったか。事故で脳に致命的な怪我を負ってしまったらしい。

簡単に言えば、事故以前の記憶はあるが、それ以降の記憶を1日しか保つことが出来ない。寝てしまえばその日の記憶はリセットされ、毎日がその繰り返しらしい

本当は俺と同い年なのに、彼女は毎日が高校生の日曜日だった


俺は諦められなかった。毎日同じ行動をしている彼女に逢うことは簡単だったから

ある時はわざとぶつかって、ある時は同じ本を買って、時に拒否され振られもしたが、それでも彼女のことを毎日口説いた

彼女の好きなもん、彼女の傾向、彼女のことを色々知ってどんどん彼女のことが好きになった


俺と会って変わったこともあったらしい。勿論毎日会えるわけではなかったが、俺と会った次の日の朝は、彼女は必ず鼻歌を歌っているそうだ

治る見込みはほぼ無いらしいが、俺の誘いを彼女が断ることは無くなった。彼女は毎回、番号を書いたメモを俺に渡してくれて、そのルーティンじみた行動が切なくも、嬉しかった


1度だけ、彼女に全てを話したことはある。本当の日付、俺の奮闘、俺の気持ち

後で彼女の親に怒られはしたが、彼女は涙を流しながら、それでも笑顔で

「私は毎日、謙也くんに恋をしてるんだね」

そう言った


俺の親父は町医者で、そこを継ぐ気ではいるが、医学部として、俺に出来ることはないか、具体的に勉強を始めたのはそこからだ


今日もまた、昨日の俺を忘れた彼女に会う

見慣れた背中を追いかけて、今日はどんな段取りにしよか、なんて考えながら


「なあ、これ落とさんかった?」


今日は、水曜日。


謙也とはじめまして


不思議そうに、怪訝そうに、振り返った彼女を見て、何十回目かの心の痛みに耐えた

氷帝と家族になろうよ:★→←謙也とはじめまして(1/2)



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設定タグ:テニスの王子様 , テニプリ   
作品ジャンル:恋愛
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光華(プロフ) - 逆からのやつ感動です!!柳君だからこそできることかな?神ですね! (2021年3月11日 21時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
Haruka Ö(プロフ) - 逆から読むのは凄すぎました!!! (2020年1月27日 23時) (レス) id: 0d992502c1 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 逆から読むのがわからないです…。理解力なくてすみません!!気になるので誰か教えてください! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 2a82e997d1 (このIDを非表示/違反報告)
佐和(プロフ) - はじめまして。ろちこさんの作品にはまってます。がっくんのプロポーズ、笑いました。からあげwww逆ハ話も好きですが、誰か個人落ちの話をもっと読んでみたいです。更新頑張ってくださいm(._.)m (2019年8月18日 0時) (レス) id: 892b8d0726 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - ゼクシィじゃねーのが面白すぎたので日常会話で積極的に使っていこうと思います(^ω^) (2019年7月10日 19時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろちこ | 作成日時:2018年4月17日 2時

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