【d!】傾国の天使。 (ページ18)

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１８△ 唸れ、劣等感ページ18

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「変な、女やったなあ」
　ぽつりと静かになった部屋で俺の声はよく響いた。

　壊れた扉、荒らされた部屋、俺の身体に残るあの女の熱。
　あーあ、こりゃアカンわ。そう俺はベッドに沈んだ。アイツに俺は惹かれてる、分かりやすいほど

『ヒッ、おぞましいその顔でこっちを見るんじゃないよ』
『ヘンリー家の恥晒しが』

　不意に母親だった女と父親だった男の言い放った言葉を思い出した。懐かしいなあ、あの頃は抵抗する力も度胸もなかったからな、好き放題されとったわ。殴られたり、蹴られたり、飯もろくに貰えんかったり。

　醜い、おぞましい、気持ち悪い、この国にいる奴らはその一通りの言葉を言われてきたやろうな。俺のがまだマシな方やと思う。
　もっと酷いやつは親に殺されかけたこともあるし、醜い俺らの人としての尊厳は塵以下やった。

　俺もこのまま惨めに生きていくんやなあって思っとったけど、でもそれを救ってくれたのがグルッペンやった。
『我々は数々の苦難を乗り越えてきた、そろそろ我々は荒廃と瓦礫の中から軍旗を立ち上げるべきだろう。⋯⋯どうだコネシマ、俺の手をとるか？』
　その時から醜い俺らは手を取り合った。そしてどの国にも負けないぐらい強い国を作り上げた。まだまだするべき事はあるけど、それでも俺らは自分達の尊厳を取り戻した⋯⋯

　そう思ってた、思ってただけやねん。

　どんなに国を強くしたって、金に物言わせて女抱いたって、この底に残る寂しさや悔しさは埋められんくて

　それをあの頭がおかしい女が意図も簡単に埋めたんや。
　格好良いって、イケメンやって、ホンマに生まれて初めて俺は言われた。

　嫌悪感も何も無い真っ直ぐな綺麗な目でアイツは俺に言った。耐性がない俺はすぐにクラっときたんや。俺かて思うわ！チョロすぎやろって！！

『どきどき、してます』

　傲慢で狡賢くて頭が可笑しいのは分かってる。

　⋯⋯分かってるけど、そんなのひっくり返すぐらい俺らの目の前に現れたアイツは

　アイツは

　────天使みたいな女やった。

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