【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ10)

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そんな笑っている私を見て「あっ」なんて言葉を零す月崎くん。何かあったのだろうか、あっ、もしかして笑ったら失礼だっただろうか、なんて考えていれば月崎くんはふっ、って笑う。

「やっと笑った」

なんて。

優しい笑みで、唐突にそんな事を言ってくるものだから、心臓に悪い。さっきまであんなに関わりたくない、とか思っていたのに、こんなにも心臓がばくばく鳴るのだから。

( あー、もう…… )

こんな事、言われ慣れてないんだよ。特に異性には。本当心臓に悪い。……けど、まあ、

( 悪い人、ではないのかもしれない )

まだ話して数分しか経っていないが、直感的にそう感じた。

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「 ……海？」

あれから約2ヶ月。現在夏休み。彼、月崎くんとは仲良くなるにはそう時間はかからなかった。彼の性格が性格なのだろう、とてもフレンドリーで明るくて、優しい。そんな性格の持ち主だからこそ、彼と仲良くなれたのかもしれない。

月崎くん呼びから志麻くん呼びに昇格したし、向こうも花園さんからA呼びへと昇格。連絡先も交換し、偶に2人で遊びに行ったりもする。

仲良くなればなるほど彼の色々な面に惹かれていき、恋に落ちるのにもそう時間はかからなかった。…我ながらちょろいな、と思う。本当に。

そしてそんな彼から海のお誘い。まあそりゃあ、驚きもあるが嬉しさの方が強い。数多くいる友人の中から、私を誘ってくれたんだなんて。…これでほかの人も誘ってる、とかならかなり恥ずかしいやつだが。まあ、そこは置いといて。

志麻くんからの、海のお誘い。こんなの、返事は1つに決まっている。志麻くんに"行く！"と返信をした後、鳴り止まない心臓の音を抑えるのに必死だった。

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「海だー！」

当日。どうやら行く人は志麻くんと私、2人だけらしく。志麻くんなら他にも誘う人いっぱい居たというのに、どうして私なのだろうか、なんて。

「 …ねえ」
「ん？」
「どうして私を海に誘ってくれたの？」

直球にそんな事を聞けば「んー… 」と少し濁した後、口を開く。

「ここ、夕方なったら凄い綺麗やねん。それ見てほしいな、と思って」

そう言ってにかっと笑う志麻くんはとてもきらきらしていた。

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