【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ36)

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別れて、あの日きみは確かにそう言った。

小さな、それでも聞こえるような声で

きみは僕にそう告げた、

わたしと別れて、と。

「…な、んで？どうしたの、A」

「…別れて、の意味が分からないの」

「そうじゃな…っ、なんでいきなり…、」

狼狽える僕にきみはすらすらと言葉を並べた

「…冷めたの。…ねぇ、これ以上言わせる？」

零度の、声

息ができないのか、上手く吸えないのか、

どちらでもありそうで、ただ目の前が苦しい。

ぼやぁ、と視界がぼやけ始める。

泣いてるんだ、

ぽたり、ひとつ波打ち際の砂浜に落ちて

それは海に流される。

気づいたのに止められないたくさんの涙。

「…ひどい、ねAは…っぼくはこんなにも、」

愛してるのに、

そうぽつりと言葉を溢せば、彼女の瞳は揺らいだ

そんな瞬間は切り取られる、

彼女はなにかを海に向かって投げた

きらりと反射して光るものを見て僕は走った。

「やめ、て…ｯひろわないで…あまつき、くん…っ」

「うるさ、い…ｯ、なんで、なんでｯ…っ、」

冷たい、冷たい海の中に手を伸ばす。

海は透けるように綺麗なのに、見つからない

振り向けば、彼女はもういなくなっていた。

ぼつり、またひとつ海に涙を落とした。