綺麗な ページ4
例えば、宝石だったり、絵画だったり。歌や景色、色々あるかもしれない。誰しもが一度は感じるだろう。「綺麗」だと。何て陳腐な響きか。人はよく知らないものを知ったように言葉を零す。「綺麗」と零すのもまたその中の一つなのだろう。
斯く言う俺は、今までの人生で一度も綺麗と感じたものはない。
物や音等は勿論、人ですら綺麗と感じたことはない。それは感情がないから、とは少し違う。俺だって笑うし泣くし怒る。ただ単純にそう感じたことがないだけだ。……あ、俺は厨二病とかじゃないからね?
「ちょっと、うらたくん?ちゃんと手動かしてる?」
苦々しい声と共に現れたのは、同じクラスの女子。今俺はこいつと一緒に屋上のプールの掃除をしている。何故か二人きりで。特に絡まない奴と二人きりなんて気まずいなんてもんじゃない。さっさと終わらせて帰りたい。
「……ああ、やってるよ。ちょっと休んでただけじゃんか」
「あ、そ。じゃああそこにあるホース取ってくれない?」
自分で取りに行けよ、と小さく毒を吐き渋々ホースを取りに行く。
ホースを手渡すとそいつはホースの片方を蛇口に繋ぎ、それを思い切りひねった。しかし、思い切り過ぎたのかホースの口からは噴水のように水が噴き出す。
ばしゃり、と気持ちの良い音を立てながら噴き出した水は俺の身体に見事にかかった。
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作者名:高瀬その | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2018年6月26日 21時