【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ26)

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「また来たよ」

そこに落ちていた石を海の方に投げながら言う。三回跳ねて沈んでいった石を見て少し笑を零す。

「この手紙ってどうやって沈んでるのかな」

小さく疑問を口に出してから、沈めるのに使う石を探す。いつもは最適な物が見つかるまで探し続けるのだが、今回はすぐ見つかった。

「さて、そろそろか」

左手に瓶、もう片方の手にさっき拾った石を持って海の方へ行く。足を漬けると冷たく、気持ちの良い水が当たる。もっと奥の方へ進んで後ろを振り返り、自分の家のある丘の方を見て叫ぶ。

「辛かったし、寂しかったけど、楽しいことも少なからずあった！ありがとう！」

前を向き直してそのまま海に入っていく。最後に一言、残して。

「さようなら、また来る日まで」

海は深い。底に近くなるにつれて青みが増していく。そこに一人の少女が待っている。上からゆっくりと降りてくる少年を。

「会いたかった！一度でいいから顔を見たかった」

「私も。ありがとう。会いに来てくれてありがとう。あのね、私もまふくんが好き。付き合ってください。今までありがとう。これからもよろしくね」

微笑みながら、かつ泣きそうになりながら想いを伝える少女に、少年は力強く頷く。

「天界でも頑張って」

「君こそここで楽しんできて」

その言葉を最後に、少年は意識を飛ばした。

「本当に大好き。愛してる」

そんな少女の声を聞きながら、彼は旅立った。

～Fin～