【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ25)

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＊ページ25

『今回もお手紙ありがとう』

そんな言葉から始まる手紙。毎回文頭は言葉が違っていて、彼女は語彙が豊富だということが良くわかる。だが、何よりも分かることは、僕がそこの言葉がなんなのか、返事が来る度に楽しみにしていることだ。本当に、彼女の話は色々な語句が使われていて、読んでて全く飽きない。彼女の返事をいつも、今か今かと待ち続けていることは秘密にしておこう。

『まふくんはやっぱりすごいな』

続きの文を見て僕の心は踊らされる。僕の望み通りのことしか書いてなくて。優しいアドバイス、時には叱りの言葉。全部、僕には必要な物で、つくづく彼女はすごいと思う。
そんな手紙の中に、たまにある言葉。すごく気になる言葉。

『まふくんと会ってみたいな』

これは僕も会いたいと思うからいいんだけど、見る度に意外だと思うんだよね。書き方が彼女らしくないな、って思って。

『まふくんってどんな感じなんだろう』

性格とか、ある程度は手紙のやり取りで分かるんだけど、どうしても会ってみないと分からないこともある。僕も彼女と一回でいいから会って話してみたいな。
それと同時に思う事。海の中ってどんな所なんだろう。一応彼女は教えてくれるけど余り実感がわかなくて。写真とか見てみたいな、なんてね。

『海ってね、居心地いいんだよ。あったかくて、気持ちも落ち着くし。それに、リラックスしやすいのが一番いい所かな。私、海大好きなんだよね』

いつだったかの手紙に書いてあった。そこからは本当に海が好きだという事が伝わってきた。

「いつか会えるといいな」

そんな呟きは一人ぼっちの部屋でやけに大きく響いた。本当に会う日が来るといいな、と思いながら僕はまた手紙を書き始めた。

『返事、ありがとう。嬉しいよ。
今回はいつもと違う話をしようかな。

僕はね、小さい頃から海が好きだったんだ。潜ると不思議な空間が広がっていて、神秘的だよね。もしかしたら海に君がいるからかもね。会ってみたいな、僕も。

あのさ、話題は変わるんだけど、僕の話、聞いて？
僕ね、気づいたんだ。ずっと気づかないふりしてたけど覚悟を決めたから言うね。

好きです。もちろん、恋愛感情として。すごい遠距離で、恋人らしき事もできないけど、僕と付き合ってください。

振ってくれて構わないけど、僕の気持ちが伝わってたらいいな。君のタイミングで返事をしてね。

じゃあ今回はこの辺で。ありがとう、バイバイ。

まふまふより』