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高校2年生の頃の感情がふつふつと胸の中で湧き上がってきて。
あの頃、同じクラスになった私とセンラは仲が良かったほうだったと思う。
でも、私はそれ以上の関係になることを望んでしまったのだ。
けれど彼はそんなこと望んでいないだろうし。なにより言ってしまったせいでこの関係が壊れてしまうのがひどく怖くなってしまい、結局気持ちを伝えられないまま転校してしまったのだ。
お互いに砂の上に座り、横にいるセンラをチラリと見る。
海をジッと見つめている彼は悔しいけどカッコよくて。
久々に見た彼の姿に、ドクッと心臓が大きく1回鳴った。
ふと、センラが口を開いた。
「俺、ずっと言いたかったことがあったん」
「………なに?」
真剣になった彼の雰囲気に戸惑いつつも聞き返す。
センラを見ると、彼もまた私をジッと見つめていて。そして、センラは苦しそうに微笑んだ。
「………A、好き、やったよ」
「っ…」
「ずっと好きやった。でも伝えられないまま別れて、後悔してたん」
「………私も、ずっと好きだった…」
「うん……もっと、早く言えてたら良かったんやけどなぁ」
彼はそう呟くと少し目を伏せた。
その時、私にはしっかりと見えてしまった。センラの頬に雫が零れていくのを。
「えっ、センラ?」
私の言葉に顔をあげたセンラの2つの目には涙がキラリと反射して見えた。
「え、なんで、なんで泣いてるの?」
「………もっと、」
「え?」
「もっと、早く伝えてたら……っ」
なに、その今にも別れるような言葉。
理解が出来ずにいた私にセンラは弱々しく微笑んだ。
「もう、お別れみたいなんや、菊香」
「え、なに言って……」
「Aはここにおったらあかん。早く……早く、帰らんと」
「待って、やだよ。折角会えたのに、」
「ここはAのいるべき場所やない」
訳もわからずにセンラに説得されている。
ただ1つ分かるのは、
____もう、会えないんだ。ということ
なんで、帰るって何?まだ来たらダメってどういうこと?
疑問ばかり浮かんでくる中、視界が掠れていくのに気づく。
そんな視界の中で見えたセンラの姿に、私は言葉を失った。
「……セン、ラ?」
さっきまで大人の姿のはずだったのに。今の彼の姿は私の記憶の中と全く一緒。
見慣れた制服、少し幼い顔つき。
そこには高校生の頃のセンラがいた。
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作者名:高瀬その | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2018年6月26日 21時