3 ページ45
下唇を食むようにされ、びっくりして口を少し開けると、割り込んできたのは彼の舌？
ちゅ、なんてかわいい音じゃない。もっといやらしい音が室内に響く。
ふたりきりの部屋がやけに静かなものに感じる。
怖くて目は開けられない。そこにいる彼がどんな顔をしているのか、見たくなかったから。
本能的に意識してしまっていた背中側にあるベッドの存在が、やけにリアルに思えてきて。
「っあ……」
ピタリとやんだ口づけにそっと目を開くと。
我に返ったように、そこにはいつもの拓弥くんがいて。
「違う。泣かせるつもりじゃなくて……」
気づけば濡れていた頬。どうやら私は泣いてしまっていたらしい。
あーって頭を掻いて、髪をぐしゃぐしゃにした彼。その大きな声に肩をびくつかせれば、ハッとしたように拓弥くんが私を見た。
「ごめん。ほんとごめん」
「ううん。違うの。ちょっとびっくりしただけで……」
一瞬でも彼を怖いと思ってしまった自分がいた。そんな事実から目を背けたくて。
キスが途中で途切れて、安心してしまったのは何故だろう。
色んな感情がごちゃごちゃになって、溢れ出した涙だった。
「ごめん」
そう呟く彼が、あまりにも弱々しいから。
拓弥くんのことが嫌なんじゃない。キスだって嫌じゃない。でも、ほんとにちょっとびっくりしただけなの。
そう伝えたいのに、伝え方が分からなくて。
考え込んでいるうちに、そっと抱き寄せられる。私の精一杯で、背中に回した腕に力を込めた。
「……余裕ねえな、俺」
耳元で聞こえた呟きの意味を、まだ私は知らないまま。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「超特急」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちよこ(プロフ) - 草村 みゆさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、書いていてよかったなあと思えます(; ;) 嬉しいです(; ;) 気まぐれな更新が続くかと思われますが、今後ともお付き合いくださると嬉しいです！ (2017年10月9日 23時) (
レス) id: 96b79ece7b (このIDを非表示/違反報告)
草村 みゆ(プロフ) - この話すごく好きです！ 続きも楽しみにしてます＼(^o^)／ (2017年10月1日 17時) (レス) id: d19d8cf885 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちよこ | 作成日時：2017年8月16日 19時
