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「っ……びっくりした、拓弥くん」
突然聞こえた声に振り返ると、いつからいたのか、保健室の入口に立っていた彼。
思わず怯んでしまったのは、彼が不機嫌そうに眉を顰めていたから。
「帰るよ」
「う、うん」
足早に教室をあとにしてしまう彼。
いつもなら、私が荷物をまとめてそこへ行くまで待っていてくれるのに。
拓弥くんはわかりやすいけどわかりにくい。
今だって、怒っているのは明白なのに、その理由が何なのかはサッパリ検討がつかないから。
「あの、福田くん」
「ふふ、大丈夫です。鍵、返しておきますね」
「ごめんね、ありがとう」
ふにゃふにゃとした笑顔で手を振った福田くんに後を任せ、慌てて拓弥くんを追いかけた。
「拓弥くん……？」
「……なに？」
「え、や……なんでもない」
今日は元々、拓弥くんのお家にお邪魔させてもらう予定だったから。バスを降りるタイミングも、彼と一緒。
でも、心なしかいつもより早歩きの彼を、追うだけで精一杯。
お家の方はまだ帰っていないと聞いて、そんなときに上がるのは失礼なんじゃないか……と不安になったけど。
気にしなくていいからと靴を脱いで言った彼。
これ以上何か言ったら、さらに怒らせてしまう気がして。
ローファーを脱ぎ、お邪魔しますと小さく言って、階段を上がる拓弥くんの背中を追いかけた。
「こっち、」
彼のお部屋に足を踏み入れてから、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見回す私を、拓弥くんが手招きする。
大人しく隣に座れば、彼の手がすーっと優しく髪を梳く。落ち着くようで落ち着かない数分間。
もう怒ってない？ 不安になって、ちらりと彼の顔を盗み見たのが間違いだった。
ふと目が合った彼の表情は、ひどく色気のあるもので。
後ずさりしてしまいそうになった私を、逃がさないと言わんばかりに重ねた唇。
キス自体は、初めてじゃない。
二人で並んでバスを待っている時に、不意にされたこともある。あの時は、慌てて周囲を見回す私に、「誰も見てないよ」って拓弥くんが笑っていた。
いつもより長いそれは息継ぎの仕方が分からなくて。ぎゅっと目を閉じていたら、両頬に添えられた手。
「ん、……！」
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ちよこ(プロフ) - 草村 みゆさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、書いていてよかったなあと思えます(; ;) 嬉しいです(; ;) 気まぐれな更新が続くかと思われますが、今後ともお付き合いくださると嬉しいです！ (2017年10月9日 23時) (
レス) id: 96b79ece7b (このIDを非表示/違反報告)
草村 みゆ(プロフ) - この話すごく好きです！ 続きも楽しみにしてます＼(^o^)／ (2017年10月1日 17時) (レス) id: d19d8cf885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちよこ | 作成日時：2017年8月16日 19時
