2話 ページ4
地図の通りに進んだこともあり、案外予定より早く事務所に到着した。
支配人からもらった鍵で扉を開け中に入る。
扉を開けると冷たい空気が私を包んだ。
今まで誰も入っていなかった部屋だ。
当然の如く、空気は乾燥しているし、部屋も埃だらけである。
とりあえず足を踏み入れ、渡り廊下を進み、扉を開ける。
そこの扉を開けると、そこは俗に応接間と呼ばれる部屋であった。
そこそこ大きめの机と椅子が並んでおり、対面する形で椅子が置いてある。
私はその机の上に持ってきた荷物を1度置き、椅子に腰を下ろした。
「仕事を開始できるのはまだまだ先の話になりそうかな。」
1人そう呟き、浅いため息をついた。
とりあえず、掃除から始めないといけない、あとは資料の整理、それにやることは溢れている。
休んでいる暇などない、ため息をついている暇などない。
自分で自分自身の尻を叩き、体を起こした。
こうでもしないとすぐに仕事を始められない。私がこの地にやってきたのも元々は仕事に専念するためなのだ。
娯楽はまた後からでも出来るから、そう言い聞かせ、私は持ってきた資料を机の上に並べると、付属の本棚に並べた。
一通り本棚に並べ終わると、次は室内の掃除である。
掃除道具が足りないので、また今度近所のホームセンターなどで買ってくることにしよう。今は小さいちりとりで埃を集める事しかできないが...あ、雑巾で水ぶきくらいはできるか。
新しく借りたこの事務所だが、結構広い。
知り合いの不動産屋に相談したらここが一番オススメだと言われたのだ。
以前まで仕事をしていた場所より倍も広い。
果たして一人でこの事務所を掃除し切ることはできるだろうか...。
いや、無理だろう。
普通は業者にやってもらうような広さの部屋だ。
1人では到底時間がかかってしまう。
「......万事屋。」
先程、ここまで来る道中にあった店のことを思い出す。
万屋とは、いわゆる何でも屋だったはずだ。
もしかしたら掃除や家具の片付けも手伝ってくれるかもしれない。
頼んでみる価値もあるかもしれない。
何故か高鳴り始めた胸が、これから起こる全ての出来事を予知していた。
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作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時