1話 ページ3
やっと着いた。
人々が行き交い、賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる街。
誰も私に目もくれず、自分の道に歩みを進める町の人々に私は密かに親近感を覚えていた。
「自由な街...」
つい漏れてしまった自分の声が自分の中で反響する。だが、私の声に反応して足を止める者など、1人もいない。
本当にここは自由な街だ、と改めて思う。
人々が生き生きしている、目が輝いている。そして何よりも天人たちと共存している。私には、そのことが驚きであった。
聞くところによると、江戸も天人達の配下に置かれているというが、私にはそのようには全然思えない。私が以前までいた地とは比にならないだろう。
平和だ。
仕事でこの地にやってきたの身なのだけど、もうこうなれば永住するしかないよね、
って、まだそんなことを考えるには当分早い。
まだ自分の目で見極めなければいけないことが山ほどある、それからだ。まず、私は仕事をしなければならないのだから。
「とりあえず、事務所に向かわないと。」
懐から地図を抜き出し、道の端っこで地図を広げる
どうやらこの先をまっすぐ進んだ通りの路地裏を左に曲がってまっすぐ進み、それから...
もうややこしいので実際に歩いて探してみることにした。地図の通りしたがって歩けばいずれはつくはずだろう。
私は歩を進めた。
人が行き交う道の真ん中を歩く。
このようなこと、前に住んでいた人口の少ない地ではなかなか体験できなかったことなので密かに興奮した。この調子で着々と興奮していけば、いずれは鼻血による大量出血で死にそうなので、もうあまり食いつかないようにしよう。うん。
そのまままっすぐ進んでいくと、道の左側にあるとある店に目がいった。
そのお店の1階部分には、"スナックお登勢"と書かれた看板が付けられており、いかにもスナックという感じの外装である。
私が気になったのはそのスナックではなく、その二階部分にあるお店の看板だ。
"万事屋銀ちゃん"。
聞き覚えのあるフレーズが頭の中でよぎった。
昔の知り合いにそんな呼ばれ方をされていた男がいた事を不意に思い出す。
そういえばその男の噂で、江戸に住んでいるという事を聞いたが、実際のところはどうなのだろうか。
会えるものなら会ってみたいし、会えないのならしょうがない。
_______いずれ銀時にも会ってみたいな。
そう思ったのもつかの間、そいつとの再会はすぐ直前に近づいているのであった。
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作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時