10話 ページ12
そうなんですね、と相槌をうつ新八くんを横目に、私は密かに銀時をじっと見つめた。
私からの視線に気がついた銀時は、私と目を数秒合わせると軽く会釈する。
その瞬間、安堵の気持ちが私の中を埋めた。
良かった、まだ覚えてたんだ、銀時。
これは、昔から銀時と私の間で行っていた目配せだった。
本当に分かってる?と投げかける目配せと、それに答える銀時の会釈。
なぜか、心が暖かくなった。
「それで依頼内容なんだけど、事務所の清掃作業を手伝ってもらいたいの。」
「清掃作業?」
「...掃除だったらそこら辺の清掃会社でもいいんじゃねえの。」
「私も最初はそう思ったんだけど、掃除屋だと攘夷志士が働いてるかもしれないから駄目なの。情報屋って仕事上攘夷志士とも深く関わるから...。
あと、掃除屋ってチェーン店が多いでしょ? それだと中々契約書にサイン書いてくれないんだよね。」
「契約書、ですか?」
「ああそう、契約書にサインしてもらう必要があるんだけど大丈夫?」
「...どんな契約書なのか、一旦見せてもらう事は出来ますか?」
契約書に関しては、新八くんも疑っているようだ。
詐欺まがいの事をされるかもしれないと思っている様子だったが、
そんな事は一切するつもりはない。
私は懐から先程とは違うバッグを取り出すと、
そのバッグのチャックを開き、中から折り畳まれた紙を取り出した。
「ぐちゃぐちゃでごめんね。これが契約書です。」
折りたたまれた紙を開き、中に書いてある文を読み上げる。
「第1条、情報屋に関わったことは他の誰にも漏らさない
第2条、情報屋に関わった以降に起きた事は保証しかねる故、自己責任とする
これだけ。はい、どうぞ。」
渡された契約書をじっと見つめる新八くんと銀時だったが、
ひそひそと私に聞こえないように何かを喋った後
おもむろにライターを取り出すと、ボッと火を出し
紙に近づけた。
「なにやってるの?」
「何って、見りゃわかんだろあぶり出しだよ。」
「あぶり出しって...火であぶったら文字とか出てくるってやつ?
そんな小細工してない、ってそんな火を近づけたら普通に燃えるから。ねえ。」
「うわっ!銀さん、燃えましたよ!!何とかしてください!!」
「あ"っづ!!あ"っづ!!」
「ほら言わんこっちゃない...」
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作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時