齟齬の模様です。(szk)☆ ページ35
朝4時ならではの冷たい空気が張り詰めて私の肌を刺激してくる。周囲から何も音がしないことを確認してから、私はそっと扉を開けた。
カンカンカン、と少し速いメトロノームのような乾いた音と私の呼吸音がマンションの階段に響き渡る。肺の辺りが痛くなるのを感じながらももうすぐ1階だという所まで来た時、鈴みたいに奇麗な、でも今は絶対に聞きたくなかった声が耳にはいりこんできた。
｢A..？｣
声の主はそのまま私の腕をぱしりと掴み、訳が分からないと言う風にゆらゆらと揺さぶる。
｢A何してるの？なんで勝手に1人で外に出てるの？｣
『えっと、』
なんて言えばいいのだろう。
彼＿勝を直視する勇気が出なくて彼の足元に視線を落とす。私がそのまま考え込んでいると、勝はか細い声で静まり返った空間を支配した。
｢Aは太陽に当たっちゃダメなんだから。だから俺が護ってあげてるのに。ねぇA、家の中に居たらAは安全なんだから、外に出たらダメだよって俺、前に言ったよね｣
『太陽に当たっちゃダメって..私は別にドラキュラとかじゃない。別に危険じゃないよ』
的外れな事を言った勝についカチンときて、そのまま思った事を言葉にする。すると彼はぎゅっと手の力を強くして、また真っ直ぐに言葉をぶつけて来た。さっきより何度か温度が低くなった気がする声で。
｢ふーん、危険じゃないんだ。だったらさ、まだ夏にもなってないのに貧血で倒れたのは誰？｣
その言葉に思わず顔を上げる。
彼は鋭い視線で私を見ていた。
｢毎年毎年、日差しが強い日に体調不良になるのは誰なの？｣
『それは..』
今、勝が言ったことは確かな事実だった。私は人より身体が弱いらしく、特に日差しが強い日になるとよく体調を崩してしまう。それで勝に迷惑を掛けた事もあった。でも...
『それは、確かにそうだけど。だからって私を部屋に閉じ込めていい理由にはならないでしょ』
負けじと私も強い視線を勝に送る。だけど、彼は全く効いていないと言う風に小さく笑った。
｢でも、もうこんなの嫌だって俺に言ってきたのはAでしょ｣
ほら、帰るよ。
そう言って彼は階段を登り始める。ぐいと強い力で引っ張られて、必然的に私も足を進めることになってしまう。
『..っやだ、離して！』
自分でも驚く程に大きな声が出たから、勝にも届いていた筈。でも、彼はこちらを見ること無く階段を上がり、廊下を歩いていく。そして、何事も無かったかのように部屋の扉を開けた。
齟齬の模様です。(szk)☆→←折檻の模様です。(hrsk)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 832人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - むさん» ありがとうございます…！！！泣私自身ヤンデレ大好きなのでこれからも書き続けます！応援ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (
レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - Oh…Kamoto…さん» 岡本さんん！！！！その節は本当にすみません…でもそう言って頂けて良かったです(安心)応援ありがとうございます！ (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - レーヴァテインさん» 新しい短編収穫の方にもコメント下さっていましたよね？！ありがとうございます…！！そう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
む - segs凄くいいです…。ヤンデレモノだいすきなので沢山書いてくださると私が喜びます♡これからも応援させていただきます！ (2021年10月19日 22時) (レス) @page47 id: 0f73c4f562 (このIDを非表示/違反報告)
Oh…Kamoto… - 初コメ失礼致します。こんにちは！ガチの岡本です！あみゃみゃに殺されるならもはや本望でもあるので大丈夫です☆これからも応援してます！！！ (2021年10月16日 23時) (レス) @page11 id: 0d243bf87d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時：2021年1月6日 17時
