創痕にはご注意を。(gnzk)☆ ページ32
『あ、げんづきー!』
少し舌っ足らずな僕の名前が聞こえてきたと思ったら、背中にずしりとした柔らかさと花が踊るような甘い匂いが僕を襲った。
でもそれは慣れた事で、いつもの様に彼女を丁寧に受け止めて振り向く。
「もーA」
びっくりするからそれやめてって言ってるでしょ、と僕が注意すると、犯人のAはなんだか嬉しそうにえへへと笑った。
『ごめんって、でも弦月の背中、なんか安心するからさ』
「...ふーん」
予想の90度上をいく彼女の返答に思わず固まり、脳内で沢山の感情がぐちゃぐちゃに混ざっていく。
..全く、Aは僕の気も知らないでさ。
少しむっとしながらAを離すと、彼女は僕のオーラが変わった事を察したのか申し訳なさそうに僕の名前を呼んだ。
『ご、ごめん、もしかして、嫌だった..?』
「別に嫌じゃないよ」
おどおどしているAも可愛い、なんて内心にやけながら言葉を返す。
「ちょっと心臓に悪いなって思っただけ」
彼女はそこで漸く安心したように息を吐き、笑った。
『良かった』
じゃあ、私これから仕事あるからさ、とAが僕から離れていく。向こう側に見えるのは、今からAと任務へ向かうのだろう男の姿だった。
一瞬だけ、その後ろ姿に手を伸ばしそうになる。
..駄目だ、僕らはそんな関係値じゃない。
慌てて引っ込めた手を口角と共に上にあげ、彼女にじゃあねと手を振った。
_それが、10時間前。
僕の目の前に広がる現実は残酷なものだった。
腹部から血を流して倒れるAと、その傍らでナイフを握りしめる男。まだ刺してから時間は経ってないらしく、憎い程に鮮やかなAの血液は彼女の服や地面に模様を作っていく。
任務からの帰りが遅い彼女を心配して向かってみたらこれだ。一先ず男のナイフを本体諸共蹴り飛ばして邪魔が入らないようにし、なるべく落ち着いてAの止血作業に取り掛かる。
付き添いで来てくれた同僚が助けを呼びに走って行った為、きっと直ぐに救護隊員が来るはず。
それまで、それまで持ってくれれば。
止血を終え祈りながら待っていると、救護隊員を連れた同僚が戻ってくる。本音を言うならば自身の手で彼女を病院へと連れて行きたかったが、僕にはやる事があった。
同僚に彼女を任せて現場を後にする。
僕が向かった先にいたのは、先程の衝撃で伸びてしまったのだろうアホ面を晒す男と近くに刺さったナイフ。まあ、これもどれもあれも全部此奴の自業自得だよね。
地面から、ナイフを抜いた。
創痕にはご注意を。(gnzk)☆→←近くに英雄の模様です。(ysr)☆
832人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - むさん» ありがとうございます…!!!泣私自身ヤンデレ大好きなのでこれからも書き続けます!応援ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - Oh…Kamoto…さん» 岡本さんん!!!!その節は本当にすみません…でもそう言って頂けて良かったです(安心)応援ありがとうございます! (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - レーヴァテインさん» 新しい短編収穫の方にもコメント下さっていましたよね?!ありがとうございます…!!そう言って頂けると嬉しいです!ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
む - segs凄くいいです…。ヤンデレモノだいすきなので沢山書いてくださると私が喜びます♡これからも応援させていただきます! (2021年10月19日 22時) (レス) @page47 id: 0f73c4f562 (このIDを非表示/違反報告)
Oh…Kamoto… - 初コメ失礼致します。こんにちは!ガチの岡本です!あみゃみゃに殺されるならもはや本望でもあるので大丈夫です☆これからも応援してます!!! (2021年10月16日 23時) (レス) @page11 id: 0d243bf87d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時:2021年1月6日 17時