<リレー小説版>GO！勇者育成学園！～クラス決定試験編～ (ページ2)

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紅茶の心配【鶴城光里】ページ2

『クラス決定試験』、別名『能力運動会』。ペーパーテストもあるはずなのに、なぜか入っていない。

　誰だ、筋肉は正義とか能力こそ全てとか叫んでるのは？特に後者？

　そういえば、フラフープもどきはどうしよう。教室か更衣室(体力・能力テストは体操服)に置いてこればよかった。

　突然、持っていたフラフープが振動した。驚いて投げ捨てる。

　まさか、また浮遊しだすのでは。そうなれば斬るしかあるまい。いや、兄の手がかりである以上、無闇に壊すのは……

『あのー、すみません』

　幸い、フラフープはそれ以上動かなかった。代わりに、フラフープから声がし、同時に中心に映像が流れた。瓶底眼鏡の白衣の男だ。

　フラフープの機能に感心していると、男は意味深なことを語りだした。

『実は今回の試験は新入生以外の生徒も対象になっていてね』

　おかしい。生徒会室の資料にそんな試験はなかった。

　男は校長先生と話したがっている。そうだ、校長先生なら、このフラフープの正体が分かるだろう。

　早足で校長室に向かい、扉を叩く。どうぞ、という優しい声を聞き、光里は中に入った。

「スピリット校長、お届け物です」
「あぁ、鶴城さん、何ですか、お届け……」

　光里の左手の中の物を見るや否や、校長先生は絶句した。

「何故能力で把握できない？」

　疑問の対象がフラフープであることは容易に察しがついた。いつの間にか、フラフープの中の瓶底眼鏡は金属男に変わっている。

　金属男は、何やら不穏なことを言い出した。校長先生は眉をひそめながらも冷静に言った。

「鶴城さん、早く教室に戻りなさい」
「その前に1つだけ良いですか？」

　光里は校長先生の制止も聞かず、金属男を見た。

『威勢だけは良いようだな。何だ、言ってみろ』
「そちらに兄はおりますか」
『スピリット校長の返答にもよるが、命と衣食住は保証しよう』

　どうやら無事らしい。

「食事はどのようなものですか？」
『答える義務はない』
「答えてください！兄が食べるものは限られているんですよ！コーヒーも紅茶も飲めないし、牛乳は嫌いだし、野菜もろくに食べないし！」

　そこまで叫んで、光里は我に帰った。

「すみません、取り乱しました。とりあえず、兄が無事そうで何よりです」

　それでは失礼します、と頭を下げ、フラフープはそのままにして光里は校長室を出た。

　鬱陶しかった兄が、今は心配だなんて、矛盾している。

　とりあえず、今はグラウンドに急ごう。