6 ページ16
「ゃ……たす、け…っ」
「っ……」
寝ている今のエリの、その固く握られた手をそっと触れて怖がられないだろうか
自分が何度も拒絶してしまったように
突然伸びてくる手は恐怖を煽るものだ
弾いてしまった後、その自分の行いに酷く後悔する
そんなつもりはなかったのだ、と
「…エリ、もうそっちに行くことはないよ」
「……っやだ、よ…誰も死な、な、で……っ」
こんな幼い子供が死を語る
そんな世界があっていいのだろうか
キィン…
「……もう、エリには必要ない記憶だよ。ここはあたたかいんだから」
Aは意識してエリを視た
一瞬の耳鳴りの後Aの瞳は蒼からゆっくり紫に色を変える
探すのは己との接点ではない
今夢にみてるエリの辛い記憶
『こんな小さな子供に何してる…！こんなことしてオヤジが喜ぶと思ってんのか！』
名前も知らない顔に傷のある男の人がエリを背に庇い治崎に怒鳴り声を上げている
記憶の中の治崎に少し恐怖を感じるも、Aは己を奮い立たせその記憶を辿る
緑谷達に会う前に恐らくエリを庇ってくれたであろうヤクザ者達。その人たち全てがエリを背に隠し治崎に悉く肉塊にさせられていた
幼き少女が見るにはあまりに惨い光景
知らなくていい世界
『エリ、お前が助けを求めるとその人間は死ぬ。お前のせいで他人が死ぬんだ』
呪詛のようにそう言った言葉はエリの心に刻まれる
手を伸ばせなくさせる
そんな事ないと今ならわかる
だから、この記憶はいらないんだ
「エリ、、困ったら手を伸ばしていいんだ…助けを求めていいんだよ……」
それはA自身、自分に言い聞かせるように
そっと銀糸を優しく撫でる
「痛っ……！……っ」
久々の痛みに溢れそうになったどろりとしたものをこぼさないよう慌ててエリに触れていた手を目元におく
ズキズキと痛みを主張し、目の端から零れる赤に
過去の恐怖がじわりじわりと湧き上がってくるようで心臓がどくどくと早く脈打つ
片目を開いて見るとそこには穏やかに眠るエリの姿
辛い過去を少し忘れ楽しい夢を見ていることだろう
「はっ、はっ……っ」
安堵の気持ちがAの胸中に生まれる
Aが幼い頃何度嫌な記憶を忘れたいと思ったことだろう
自分で自分の記憶を消せることを知っていたならいつもそれをしていたのに
だから、今のエリを少し自分に重ねて
いらぬ記憶を消した
過去の後悔を払拭するかのように
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございます！私も気づいてすぐ更新したのですが何故かすぐ非公開になってしまって汗また載せましたのでよろしくお願いします( т т ) (2022年10月31日 2時) (
レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - スズレカさん» コメントありがとうございます💦何度か載せてるのですが何故か非公開になってしまって。上げ直しましたのでご確認お願いします！ (2022年10月31日 2時) (レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 突然すみません！最近の更新話で3の次が5になっていて4が抜けていて話が飛んでいるような気がします。私側の不具合でしたらすみません💦 (2022年10月28日 22時) (レス) id: 569c36d262 (このIDを非表示/違反報告)
スズレカ(プロフ) - 初コメ失礼します。Himmelhoch uitramarinの4話目が非公開になってるかもしれません（違ったらごめんなさい）。いつも楽しみに待ってます。更新頑張ってください！ (2022年10月28日 21時) (レス) id: d908ec33e4 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - せつなさん» 修学旅行おかえりなさい！更新させていただいております！比較的ほのぼのライフを送っています笑楽しんでもらえてますと幸いです*.(๓´͈ ˘ `͈๓).* (2022年10月28日 5時) (レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年10月6日 14時
