好きになんてならない。【センラ】 (ページ7)

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＊ページ7

好きだった。

誰が、誰を？
彼が、センラくんが、私を。

ずっと？

「え、ちょ、待って」

「うん」

ゆったりと笑うセンラくんは、あんなことを言った後だと思えないほどに落ち着き払っている。

むしろ、この状況を楽しんでいるようにすら思えた。

「え、と……」

「えっと」とか「待って」とか、意味をなさない言葉ばかり落とす私の口。

生まれてずっと付き合ってきたのに、どうしてこんな時に限って役割を果たさないんだ、なんて、謎に自分の口に当たってみる。

けど、それでも、胸の中は相変わらずの大波だった。
落ち着く気配すらない。

「いつ、から？ずっと、って」

本当にそれが聞きたいことだったのかも分からないまま、赴くままに疑問を口に出す。

「いつからやろなぁ」と視線を外すセンラくんを、私はどうしても直視出来なかった。

「たぶん、入学式？」

「え、そんなに前から？」

素直な感想がぽろりと漏れ出た。
その声があまりにも間抜けだったのか、センラくんは「ははっ」と声を上げて笑う。

その様子はなんだか、楽しそうで。

荒れ狂っていた心の海が、ほんの少しだけ凪(な)ぐ。

「ほぼ直感、まぁ一目惚れやなぁ。『この子のこと好きになるんやろなぁ』って、笑顔見て思った」

「一目、惚れ……」

ぐるぐる、ぐるぐる。
「好き」の言葉が、「一目惚れ」という単語が、止まることなく頭の中を回っている。

未だに、彼の言っていることが理解できなかった。

「で、去年はクラス違くて、あー、なかなか会えへんのかぁって思ってたら、風の噂で小鳥遊さんが生徒会入ったって聞いたから。入った」

「そ、そんな理由で……？」

「俺にとっては『そんな理由』やないんですー」なんて、むすっとしてそっぽを向くセンラくん。

私は俯いて、必死に頭の中を整理し続けた。

(センラくんは、私が好き……？でも、でも……)

今の私はきっと、混乱しているのが手に取るように分かるのだろう。

自分でもわかる。
全然いつもみたいに頭が働いてない。

「で、小鳥遊さん」

ぎくり、と肩を揺らして顔を上げる。
ふわりと微笑んだ笑顔が見ていられなくて、私はあちこちに視線を泳がせた。

「答え、どう？」

背筋に、ひやりと冷たいものが走った。

この感覚には覚えがある。
絶対に、忘れられない感覚。

バクバクと跳ね上がる心臓は、きっと普通の女の子が感じるものでは無い。

私は、浅く息を吸って、吐いた。

「ごめん、なさ、い……」