〈 d! 〉機械じかけの擬似的ロマンス〈zm〉

15 ページ15

.



　このくらいでいいかな 自身の買い物を終え、先ほどの服屋へと少し急ぎ足で向かう。思ったよりも時間がかかってしまった。


　少し遠くから、ゾムの鮮やかな黄緑のパーカーが確認できて、良かった だなんて思ったのもつかの間、ゾムが数人の男に囲まれていると言うことに気付き、私は更に足を早めた。



｢なあ、ニイちゃん。いい服買ってんなあ おい 自分の服か？｣
｢俺の服なんてほら、ボロくて汚えだろ？金がねえからさあ｣
｢お前らオートマタのせいで職を失ったやつがゴマンといんだよ｣
｢なんか喋れよ スクラップにされてえのか？｣
｢はは お前を解体して部品売りゃ、金になるかもなあ？｣


　オートマタ保持者と反オートマタ派のトラブル。たまにニュースで見ていたが、現実で見るのは初めてだった。

　オートマタには、どんなに精巧であろうと、外出の際は特定のアクセサリーを付けることが義務付けられている。ゾムは付属品の指輪を付けていた。


｢……………｣
　ゾムは何も言わなかった。ただその男たちの目を見て、なんの感情も宿さず、そこに立っていた。


｢…すみません どうかしましたか？｣
　私は、ゾムと男たちの間に立つ。男たちは初めこそ目を丸くして私を見たが、しばらく経つとニヤニヤしながら、口を開いた。


｢姉ちゃんがコレの所有者？随分若えなあ...なんの仕事してんだ？｣
｢パパに強請ったんじゃねえか？随分とイケメンなオートマタだしなあ｣


…正直、かなり不快だ。私も確かに、オートマタには反対していたし、今だってその気でいる。だが、だからといってオートマタや、オートマタ保持者にこんな感情を抱いたことなんて一切ない。



.

16→←14

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す