見えない棘は何方から ページ4
ut side
──最初に違和感に気付けたのは、多分俺や。
早朝4時頃、空が白んできたことに焦りながらも徹夜して終わらせた、1週間遅れた書類をトン氏に出しに行く。怒鳴られ粛清させることを覚悟でドアをノックし、「失礼しまぁす…」と声をかけて一応謝罪しながら出したのに、縮こまる俺とは反対に、珍しくトン氏の機嫌は良かった。いや遅れて出したから勿論怒られたし、なんなら誤字もあって殺されるような目で睨まれたけど。
tn「…まぁ、これくらいなら別にええわ。次からはちゃんと気を付けてな」
「………、へ?あ、うん…気ぃ付けるわ」
なんや?と疑問符を浮かべるトン氏になんでもないでと言い、新たに渡された書類について話を聞いて、自室に戻るため書記長室を後にする。まだ人影のない、冷えた廊下を歩きながら、さっき感じた胸の辺りで突っかえた何かが取れなくて、部屋にいても落ち着かない時間が続いた。
ニコチン不足かと思い少し窓を開け、煙草を取り出して火をつける。一口吸って吐き出した苦い煙をぼんやり眺め、深呼吸してまた一口吸う。
「…なんやろなーこの違和感。トン氏、いつもあんな機嫌良かったかな…?」
毎日会うわけではないが、いやむしろ毎日会わないからこそ感じた、彼の些細な雰囲気の変化。なんや、気分上がるようなことでもあったんか?当てはまりそうなことを考えても特には思いつかず、なんならいつもより机の上に置いてある書類の量が多かった。自分の行動に周期性がある訳では無いが、今日みたいに朝早く書記長室に行くときは、机の上はもっと整然としていたと思う。
「んんー…?」
まぁ、考えたところで意味もないか。
ため息をついて煙草を消す。窓を開けたままにして椅子に座り、珍しくやる気があるうちにある程度やってしまおうと、貰った書類に手をつける。
「……」
万年筆を動かしながら、集中力を高めていく。
朝食の合図がインカムから鳴るまで、俺は時間を忘れて、文字と向き合った。
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ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません!花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました! (2023年4月11日 8時) (レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2021年3月4日 7時