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me side
私の何がいけなかったんだろうと、考えてしまうことがある。幹部の方々に喧嘩を売ったわけでも、色目を使った訳でもない。ただがむしゃらに慣れない環境で必死に生き、彼らの役に立とうとしてきただけだのに。
──お前もう、死ねや
冷え冷えとした殺気を持つ瞳でそう告げられるほど、私はいつから無能になってしまったのだろうか。
今となってはもう、遅すぎる思考回路だが。
有能で在りたかった。
父のように、自分を誇りたかった。
総統様のように、私を認めて欲しかった。
母親を、この国を、総統様を。
か弱い私が紡いだところで、簡単に焼き切れる糸にしかならなくても。
私が紡いだその糸が、きっと誰かを守り、繋いでくれると。
名前も知らないその人が、私のことをみて、ただ一言「ありがとう」と。
ちっぽけな幸せを噛み締めて、誰かの誇りになれる軍人になろうと。
──私はただ、そうなりたかっただけなのに。
『……何処で私は、踏み間違えたのかな』
付けた覚えのない、左腕に残る、白い痕。
日に日に増えるソレを見ると、恐ろしさよりも安心感が芽生え、皮膚より少しだけ出っ張ったソレの下で脈打つ血液が、私の心に安らぎと生きていることの温かさを教えてくれる。
『……有能になりたい』
今よりほんの少しでいいから、有能になりたい。
怒られる数を減らして、あわよくば褒められたい。
良くやった、やれば出来るなと、頭を撫でられたい。
感情のない無関心な目じゃなくて、見守られるような暖かな目で見られたい。
我儘な欲だと、嗤うだろうか。
お前には出来ないと、否定されるだろうか。
それでもいい。認められなくてもいい。
ただ、私は夢を見たい。
かつて
万人に受け入れられなくても、私を見出し、拾い上げてくれる人がいることを。
絶望に胸を絞められても、手を差し伸べ、笑いかけてくれる仲間の姿を。
私の存在を受け入れて、愛してくれる誰かのことを。
『…ただ、出逢いたかった、だけなのに』
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ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません!花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました! (2023年4月11日 8時) (レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2021年3月4日 7時