その身に宿るモノ ページ23
me side
『──っは、』
短く息を吐いて、力を込めた足。瞬間舞った兵士の身体。一凪で数十人を屠る圧倒的なこの力は、今は亡き祖国が遺してくれた遺志。辛うじて残っている聖獣──黒狼一族の長の血が流れるこの身体は、今はただ、敵を屠ることのみに集中していた。
──だから、気が付かなかった。
『.......っ』
──身体が、妙に軽い。
それを自覚したと同時に気が付いた、自身の変化。
戦いによって熱が昂り血が巡る感覚。瞬きすら忘れた視界の中、やけに鮮明に映える戦場。スローにすら思える敵の動きと、ネオンライトのように線を書く手の動き。吐息の代わりに口から出た
『──...ッヴヴア"』
滑らかに滑り込む、ナニカの意識。戦乱で感覚が鋭くなっているはずなのに気が付けなかった、身体の中の些細な変化。
──何故だろう、確かに私は存在しているのに。
『ッ.......ァ"ア"...、グルルルル.....ッ』
──意識が、無くなる。
『...ン".....──、ァ"』
頭の奥がぱっと弾け、白い光が視界を包み込む。
刹那臭った、自分のものでは無い血の匂い。
私はそれを、酷く昔に嗅いだ気がする。
...いや、指に付着したそれを、私は──
(...ヴァンの、血)
意識が暗転する直前、頭に響いた声は。
〈──我が一族の娘、黒狼の血を継ぐ者よ〉
〈──力を貸してやろう〉
〈──誰もが畏れ、敬い、崇めた我らを〉
〈──護りたい、大切なモノがあるのだろう?〉
〈──ならば〉
〈──その身、我が身に差し出せ〉
〈──娘よ、〉
〈──今こそ、我が友との誓いを果たすとき...〉
懐かしい、泣きたくなるような声がする。
──ああ、我らが護りし誇り高き
どうかその神技を用い、我が一族をお守りください。
──貴方様の血を身体に流す、我が娘のことを…
遥か昔に消えたはずの、私がいちばん、尊敬した人。
(.....ちち、うえ...の、........)
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(。・ω・。) - 子れは神ですか?神ですね(自己解決)ありがとうごさいますm(_ _)m (2021年12月29日 10時) (レス) @page38 id: 564be5b250 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - うおうおうおうおうおうおう……ッッッ(混乱)なんだこれなんだこれ…!ずっと更新待ち望んで見るぞーって思ったらめっちゃ一気に話出てるし尊いしgr氏の獣みすきだし、夢主おめでとうだし……ッッ!!ここが天国ですね(昇天) (2021年1月4日 1時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
Toki(プロフ) - おぼろどうふさん» ありがとうございますっっ! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - おかえりなさぁぁい!!待ってました! (2020年11月21日 19時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - Tokiさん» 困惑と思惑4、の最後の言葉、すごい鳥肌が立ちました。いい意味です!もう、最高ですか… (2020年9月30日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年7月24日 21時