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me side
『.....ッ』
音もなく崩れ落ちる人。敗北が確実となってなお抵抗を続ける国など、存在するだけ無意味だ。
主要幹部を全員暗殺するまで、僅か10分。
徐々に戦火の音が近づく中、外とは対照的に静まり返った城内に、ありったけの爆弾を仕掛ける。時限式にしてタイマーを起動させ、機械的な電子音を放つ無機物から逃げるよう後にした。
『...さて、と』
力こそ圧倒的なw国といえど、兵力で勝る連合軍にはやはり手間取る。防御の面で優れているα国を打ち崩すには、内側から仕掛ける他ないだろう。
『...我が牙は、他が為成らず。己が命は、彼の為に』
地を蹴って向かうは、敵国の大軍。
彼方で戦う仲間を信じ、主の命を守るため。
幼馴染としての、約束を果たすため。
『...さっさと終わらせよう』
主に、グルッペンに、逢うために。
* * *
shp side
「ゔっ.....、くそ」
消耗戦にしかならないのに、連戦故か残る気怠さ。統率もなく襲いかかってくる敵軍が鬱陶しくて苛立ちが募る。
「.....っは、」
血を吸い込んだ衣服が重い。
振るい続けたナイフが重い。
疲労が重なる身体が、重い。
「.......っ、ぁ!」
敵将にだろうか、一瞬で飛ばされたナイフ。急いで替えを出そうにも、思うように身体が動かなくて。
「...、くっそ.....!」
嬉々に揺れる敵将の瞳。やけにゆっくりと流れた時間の中で、聞こえたあの声。
『──動くな』
「.............っ」
──血飛沫が、舞う。
しかし飛んだのは、目の前にあったはずの敵将の首。
「.....遅いっすよ、Aさん」
『...あぁ、すまない』
いつもと変わらない、感情のない烏羽色。
かち合った瞳が一気に近付き、腕を引っ張られて無理やり立たせられる。頭をぽんっと叩かれて渡されたのは、Aさんが使っていたナイフ。
「...これ、」
『お前はここを守っていればいい。敵の後援は大方絶った。もうひと踏ん張りだ。いけるか?』
──そんなの。
「当たり前じゃないすか。舐めないで下さいよ」
『その意気だ』
「...死なないでくださいよ」
頷いて背を向けたAさんに、一言だけ。
振り返って不敵に笑った彼女は、酷く愉しそうで。
『私の死に場所は、グルッペンの隣だけだ』
あぁ、敵わないなぁ、なんて。
「...あと少し」
もう少しで、この戦争は終わる。
少しだけ温いナイフを握り込み、後を追うように敵の中へと飛び込んだ。
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(。・ω・。) - 子れは神ですか?神ですね(自己解決)ありがとうごさいますm(_ _)m (2021年12月29日 10時) (レス) @page38 id: 564be5b250 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - うおうおうおうおうおうおう……ッッッ(混乱)なんだこれなんだこれ…!ずっと更新待ち望んで見るぞーって思ったらめっちゃ一気に話出てるし尊いしgr氏の獣みすきだし、夢主おめでとうだし……ッッ!!ここが天国ですね(昇天) (2021年1月4日 1時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
Toki(プロフ) - おぼろどうふさん» ありがとうございますっっ! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - おかえりなさぁぁい!!待ってました! (2020年11月21日 19時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - Tokiさん» 困惑と思惑4、の最後の言葉、すごい鳥肌が立ちました。いい意味です!もう、最高ですか… (2020年9月30日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年7月24日 21時