31話 ページ35
A視点
頬を赤く照らす夕日に季節を感じつつ、ゆったりとした足取りで帰り道を歩く。
見慣れた大きな屋敷を視界に捉え、いつもの様に玄関に近づくと、一人の女性の姿があった。
「Aく〜ん！棘〜！」
おーい！と大声で僕と棘を呼ぶ声には聞き覚えがある。
__ッあの女…！！
その顔を見た瞬間、頭から怒り以外の情報が全て消え去った。
「なんのつもりでここに戻ってきたんですか！？」
僕は持っていた買い物袋を放り投げ、その女に掴みかかる。
「あら、A君？見ない間に随分大人っぽくなったのね」
その女は僕が掴みかかっている事を気にもせず、呑気に、棘は元気？と笑っている。
「今日はね、棘を引き取りたいなと思って来たの」
「……は」
「棘ももう4歳でしょ？言う事も聞いてくれそうだし、呪われる心配ももうないわよね」
「……」
「あ、どうせなら私と結婚する？あなたみたいにカワイイ子なら大歓迎よ…？」
女は僕の腕に絡みつき、僕の腕を胸に押し付ける形でそう言った。
「ふッざけないで下さい！！」
僕はそう叫び、腕を振り払う。
__お前のせいで！お前のせいで兄さんは…！
すると、僕の大声に気づいたのか、棘が玄関から顔を出していた。
「たかな…？」
それに気づいた女は目を輝かせ、棘の方へ一直線に走り出す。
「棘〜！こんなに可愛くなって…！将来有望ね…。モデルにでもしようかしら！」
棘のことを引き取るつもり満々で喋るその女に、棘は、いくら？と困惑の表情を浮かべている。
「棘、私の事忘れちゃったの？私は…」
「『帰れ』！！」
僕が叫ぶと、棘と女は驚いた様に僕を見る。
「帰って下さい……お願いしますから、僕と棘にこれ以上関わらないで下さい……！」
ほとんど叫ぶ様に懇願する。
「姉に呪言を使うなんて……！やっぱり化け物よ貴方達！ああもう最悪！」
また来るわね棘、と情緒不安定に思えるほどコロコロ声色を変えて喋りながら女は去っていった。
「棘、ご飯にしよう」
棘はつな？いくら？と誰か気になっている様だったが、僕は無視をした。
棘は知らなくていい。知るべきじゃない。
__あの女は僕から棘すら奪おうというのか……！
「たかな？」
「ごめん棘、今はこうさせてくれ」
僕は棘の体温を確かめる様に、狭い布団の中で棘を強く抱き締めて寝た。
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nanox(プロフ) - 三毛猫さん» コメントありがとうございます。申し訳ありません！編集の時に間違えて全体公開してしまってまして……もう外したので大丈夫だと思います！わざわざありがとうございます！嬉しいです。 (2021年4月17日 3時) (
レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いています。棘君と主人公君とのほのぼのとした日常がとても癒されます…宜しければ続編の保護パスワードを教えて下さい。このご時世の中ですがお体に気を付け下さい。いつも素敵な小説をありがとう御座います。 (2021年4月16日 23時) (レス) id: d0bea6ab41 (このIDを非表示/違反報告)
nanox(プロフ) - EVENINGさん» コメントありがとうございます。実はマフラーの色は作者が優柔不断すぎて未だに決められていないんです…。青や黒など落ち着いた色を普段使いしてそうなイメージですね。季節や気分でも変えると思います。曖昧ですいません… (2021年3月26日 22時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - 下のコメント間違えましたすみません。マフラーの色何色がいいですか？これからも頑張ってください。 (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - あの、マフラーの色は何色ですか？ (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanox | 作成日時：2021年2月28日 23時
