【旧バージョン】僕のクレイジーDAYS (ページ11)

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画家のリーフさんページ11

その場の流れで、僕はリーフさんの引越しのお手伝いをする事になった。

サンクチュアリの庭先に止めてあるリーフさんの車から荷物を運ぶ。
外は明るくて気持ちが良いから、リーフさんとお話しながらの作業はとても楽しかった。

「へぇ、君はあそこの高校の生徒だったのか。」
「そうなんです。医者になることを目指してまして……でも、試験に落ちちゃったんです。」
「まぁ、君は若いんだから大丈夫さ。チャンスはこれからいくらでもあるよ。」
「そうですね……！僕、頑張ります。」

僕がサンクチュアリに越した訳を話すと、リーフさんは優しい言葉をかけてくれた。

あぁ、試験は上手く行かなかったけど、その後からの僕は本当にツイてると思う！
大家のユウミさんはとっても綺麗で優しい人だし、下宿仲間(フラットメイト)こんなに爽やかでかっこよくて良い人だもの。

明るい未来しか見えないなぁ。
これからは、何やら全て上手く行きそうな気がする！

リーフさんの身の回りの品や日用品らしきものの荷物は、僕の時と同じようにかなり少なかった。
でもその代わり、車には風景画のキャンバスが沢山積まれていて、僕とリーフさんは何度も車と１号室を行き来した。

リーフさんは画家なのだそう。
近いうちに、美術館で個展を開く予定なのだとか。
今日は部屋に荷物を置いたら、お昼の前に打ち合わせしをに行くそうだ。

運びながらいくつか見せてもらった絵は、一筆一筆が魔法のような線を引いて、紙の中なのに花も草も木もみんな、生き生きとしている。

中でも僕は、スミレの花の絵が気に入った。
綺麗で華やかな百合や、見ているだけで元気になれそうな明るいマーガレットの絵も良いけど、道端にポツンと……でも萎れることなくしっかりと咲いているスミレの花は、今の僕の心境にピッタリあっている気がしたのだ。

「リーフさんの描くお花は、みんな凄く綺麗ですね！絵なのに、そこに本当に咲いているみたいです。」
僕が思わず感想を言うと、リーフさんは目を細めた。

「僕は、花や草木の美しさ、香りと色合いは神様からのプレゼントだと思ってるんだ。
力、欲望、食物のように、人間の生存に必ず必要なものではないからね……。僕は絵で、そんな美しい世界を描いて『どんな時も希望はある』と多くの人に伝えられたら良いなと思っている。」

やがて荷物が全て運び終わると、リーフさんは僕が部屋を出る時に、あのスミレの絵を紙に包んで手に押し付けて来た。