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『テスト、どうだった?』
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気まずくなるくらいだったら
友達のままでいたかったから
このままで居させてくださいと願った。
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それでも当たり前に曜日は流れて行って。
私の気も知らない彼は今日も私の部屋へやってくる。
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「あーうん」
『ん?』
「…おかげさまで」
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この前報告しようと思っていた話をする最中
ワイシャツの袖をくるくる捲る仕草が目に入って集中できない。
だめだめ、やめよう、と思えば思うほど
反対の気持ちが強くなるのはなぜ?
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『ほんと!?』
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”やったじゃん!”とクシャっと笑って
彼の大きくてゴツゴツした手が私の頭を包む。
……でもきっと私だけにじゃない。
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『どした?』
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今思えば私の名前なんて呼ばれた事も少ないし
気づくところなんてたくさんあったのにね。
いつもと変わらない浮所くんなのに別人に見える。
…そんなこと思ったって、そうであったとしても
浮所くんにとっては変わらない火曜日で。
ただ私に勉強を教えるだけの日で。
それ以上でもそれ以下でも無くて。
私はただ平々凡々な生活に色づいて、もしかしたら浮かれてたのかな。
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「ありがと、です」
『なに、ちょっとどうしたの』
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苦笑いで私の様子を確認する浮所くん。
季節はもう夏だ。
夕日にてらされた浮所くんの顔が綺麗だと思った。
もう恋なんてしない、恋をしたって傷つくだけ。
確かにあの日、そう思ったはずなのに。
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purururu
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シンとした空気の中、それを遮るかのように鳴り響くスマホ。
2人で音のする方へ瞳を移すと、”大森優実”の文字。
この子は確か、前に浮所くんのブレザーを代わりに返してくれた子だ。
髪が綺麗な女の子だったな〜、と電話の音と共に文字を眺める。
隣ではその電話に一向に出ない様子の浮所くん。
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「出ないの?」
『だって今日は火曜日……』
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その言葉で私の気持ちがどんよりした。
なんていうか、曜日で彼を縛っちゃってるような感じがして。
女の子からの電話も出れないくらい、彼の中で家庭教師という存在が
邪魔しているのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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「出て」
『いやでも、』
「いいから」
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私の言葉に渋々電話に出た彼。
そんな彼の横で、ノートに小さい文字で
”しばらく家庭教師お休みで!””夏休みください”と書いた。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時