好きなのに。【狗巻棘】《完結》 (ページ22)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:367,336 hit

２１話ページ22

．

この家から解放されたらどれだけいいことだろうか。

私の意見が真っ当に言えたらどうだろうか。

それはきっと、私にとって一番大切なこと。

私の意見を言おうとしたことはあった。

『あの、母さん、父さん……、』

「ごめんね、A」

言おうとしても聞いてくれなかった。

それが私の嫌な思い出。

だから私は自分の心に蓋をした。

私はきっと報われないのだろう。

そう思いながら高専に行った時。

彼に出会った。

ぱっちりな目。

スッキリした顔立ち。

綺麗な声。

全てが私の心をゆさぶった。

嗚呼、なんて美しいのだろう。

男の子なのに可憐で、お淑やかで。

でも、イタズラ大好きで。

少しヤンチャなところを見るとそれだけでも嬉しくなってた。

そんな先輩が好きだ。

今も、ずっと、これからも。

でも私は自我を忘れていた。

私は＂菅宮財閥の娘＂だということを。

本当の自分って何だろうか。

それはきっと、私に掛ける言葉じゃない。

好きだよ、先輩。

私は好きでもない人と結婚決定らしいです。

……最後に、思いだけでも伝えたかったな。

ﾊﾞﾝｯ､

「何事？」

『えっ、』

「い、いくらッ！？」

驚いて扉の後ろを見ている。

誰かがいなくなっていたのだろう。

きっと、悟やその他。

「誰だ君h『狗巻先輩ッ！！』ちょ、Aッ！？」

『どっ、どうしてここに？？』

「明太子、高菜、いくら」

多分、連れてこられた、って意味なのだろう。

「ちょっと待ってくれ、なぜ部外者が入ってくるのだ」

『父さんッ、狗巻先輩は部外者なんかじゃない！』

「君は黙っていなよ」

好きでもない男性が口を開く。

はぁ？？黙ってろって何。

私の先輩の話で私が黙るなんて可笑しいでしょ。

私の中でプツンと何かが切れた音がした。

『黙ってる意味ないと思うのですが何か？？

まずこの話は私の先輩の話。

この話に部外者なのは貴方でしょう。

それとお父さん、先輩に謝ってください』

「……すじこ、…、？」

ごめんね、先輩。

先輩は悪くないの。

．