Ep.59 ページ16
私は慌てて彼の後を追った。
さて、高木刑事の話によれば陣平くんは刑事として爆弾予告の事件の捜査をしているらしい。
そんな彼がどうして呪霊の居場所と思われるビルにやってきたのか。
………やだなー。
やだないやだな!!だって考えずとも分かるじゃない!爆弾が本当にここにあるから!そして呪霊もここにいる!
よもや特級は出ないだろうが、居てもおかしくない一級呪霊をバレずに祓うなんて無理な話である。
「……闇より出て闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
私は、取り敢えず帳を下ろした。
一般人が呪いのデッドラインに踏み込もうとしているのをみすみす見逃すわけにはいかない。足音を立てないように踏み入ったビルの中は人っ子一人いなさそうな静寂で―――私はその中に響く足音を追う。
陣平くんがある部屋に入った。バタン、ガチャンと音がして、それから雑音が消える。何か見つけたのか。
そろりそろりと扉に近づき、その中を除いて、私は危うく声を出しかけた。
男性の死体。
部屋の中央部にあるのを見つけた。左半身がひどい損傷を受けており、顔の判別は難しい。血があたりに飛び散っていた。あの男性の遺体は多分、いや間違いない。呪霊の被害によるものだ。
さらに視線を周りに彷徨わせた先に―――何かがあるらしい。陣平くんがしゃがみ込んでいる。おそらく爆弾と考えるのが道理だろう。
どうしたものか。私はガシガシと頭をかいた。
呪いの気配はかなり濃く、ビルを覆う帳の中に充満している。今すぐに彼には避難してほしいのだが、公務の最中ともなればそれをやめさせるのは公務執行妨害に―――。
「……っ逃げて!!」
私は術式を発動させた。
思考を放棄して、室内に体を滑り込ませる。
そして陣平くんの背中を守るように、得物を構えた。
人間のような両手両足を持つ呪霊が、バチンッと目の前の結界に弾かれて後退した。
「アァ!?なに……おっ、ま、なんで付いてき………」
呪いが、見えたんだろう。陣平くんの声が消える。なんだ、そいつ。そう、ボソリとつぶやく声が聞こえた。
バレた、というか、見つかった。やっぱり隠しながら祓伐なんて無理があったのだ。
……もういい、どうにでもなれ。
「術式順転、■■■」
2487人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やなり(プロフ) - トマトまとさん» 温かいお言葉をありがとうございます!(T-T) 拙作を好きだと言っていただけて本当にうれしいですし、トマトまと様をときめかせることができたようで良かったです(*^ω^*) こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年12月13日 14時) (レス) @page28 id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!最終話を読んで、裏設定を読んで、更にこの作品が好きになりました。愛っていいなぁと思うお話で、キュンキュンしながら読ませていただきました。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年12月11日 13時) (レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - 愛実さん» お待たせしました!!最終話を更新いたしました。楽しんでいただけたらうれしいですm(_ _)m (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - そらさん» ありがとうございます!大変遅らせながら、最終話を更新しました。楽しんでいただけたらうれしいです(*´꒳`*) (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - めちゃ続き気になる…、!!!更新待ってます!!無理しない程度で頑張ってくださいッ! (2022年10月6日 18時) (レス) @page23 id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やなり | 作成日時:2022年8月4日 14時