3 ページ25
「…何だよ、そんなでかい声で」
「あ…」
「なに、でっかいゴキでも見つけた？そんなの殺虫剤撒いとけばその内くたばんだろ」
ほれ、とキッチンの端に置かれていたのを手渡される。
そうじゃないのに口は自然とありがとうと発していて、勇吾は気怠げに珈琲を作り始めた。
「…お前も飲むか？」
「え、…うん」
「ついでだからな」
珍しいと顔に出ていたのか、勇吾は気まずそうに頬を掻いてマグを二つ用意した。
「…砂糖、入れないでね」
「ふ、こんな美味い飲み方を知らないなんて損してる奴だな」
そう言って勇吾は片方の珈琲にスティックシュガーを五本投入した。
「美味しい、ありがとう勇吾」
「おー」
作り終えたら勇吾は自分の分を手にサッと自室へ向かった。
部屋のドアノブに手を掛けたところで振り返り、後を付いてきた俺に何か用かと面倒くさそうに問いかけた。
「……勇吾の部屋に、いてもいい？」
「は？」
眉間に皺が寄り、隠しもせずに嫌そうな顔を見せた。
「…何で？」
「何でって…」
そう聞かれるのは困る。だって理由なんてない…、ただ一緒にいたいと思っただけだし。
「……えっと…」
「…面白くもない部屋だけど」
どーぞとドアを開けてくれた。
そう、結局なんだかんだ言って勇吾に本気で拒絶されたことなど一度も無い。
優しくない素振りを見せたって、根っこの部分はちゃんと優しいのだ。
「…なんか本でも読むか？昨日宏光に借りた漫画とかもあるけど」
「あ、おかまいなく」
「はぁ？ほんと何しに来たんだよ」
勇吾は回転椅子に座ってクルリと立ち尽くしている俺を見上げた。
「…ま、座ったら？」
「…どこに？」
「どこだっていいよ」
「……」
ベッド…は、さすがに遠慮した方がいいのかな。
もう一人のかわいい同居人の顔が頭を過り、結局ベッドの下にクッションを敷いて凭れることに落ち着いた。
勇吾は特別俺を意識することなくお気に入りの曲をかけて漫画を読み始めた。
珈琲を啜る音とペラ…と紙を捲る音が心地良くて、マグを持ったまま目を閉じる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絢音(プロフ) - こっちゃんさん» こっちゃんさん♪宏光も圭吾も、大好きをまっすぐ勇吾に伝えるというのを大事にして創ったので、そう言ってもらえて嬉しいです(^^)わぁ！お心遣いもありがとうございます！今書くのが楽しい時期になってるので、また次作に向けて楽しく書いてます(^^)♪ (2021年2月11日 23時) (
レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - のこさん» のこさん♪お久しぶりです(^^)おや、更新通知が？青い鳥でもほぼリアルタイムでお知らせしてるので気づいてもらえて嬉しいです♪始めから読んでくれたんですね！嬉しい♪3人のその後の話なども、またいつの日にか…。それまではここの3人にまた会いにきて下さいね♪ (2021年2月11日 23時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - つーちゃんさん» つーちゃんさん♪ふふ、ずっと読ませて下さいと言われたすぐ次に完結させてしまった何とも悪いタイミングの悪さに若干気まずくなっております(￣∀￣)笑。でも終わらないでーって、すっごく嬉しかったですよ♪またいつでも双子と宏光に会いにきてやって下さいね(^^) (2021年2月11日 23時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» これからきっと、辛いよりも楽しくて幸せな何気ない日常がたっくさん訪れるはずですね(^^)あ…ふふ、風車♪それだけはどうしても取り入れたくて、一番美味しいとこどりでラストに持ってきちゃった(*ﾟ▽ﾟ*)大好き大好き言い合う3人まるっと抱きしめてあげたい…っ！！ (2021年2月11日 23時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 赤い浴衣の別嬪さんには私ならただでからあげあげちゃうし逆ナンもしたくなっちゃう♪楽しく書けた描写でした(^^)宏光視点でのあの日語りをラストに放り込む事でまたハッピーだけでは終わらない締め方になってしまいました(*ﾟ▽ﾟ*)笑。でも愛情たっぷり注いだよ♪ (2021年2月11日 23時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：絢音
| 作成日時：2020年3月18日 19時
