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一度寝入っても物音や気配に敏感なせいで、異変に気づいて意識がフッと浮上する。
重たい瞼を抉じ開ける前に、頭を撫でる不器用な手の優しさに気づいて泣きたくなった。



『まったく、こんなところで寝んなよ。風邪引くだろ…?』



俺の気持ちなんてなかなか察してくれないくせに、いつも絶妙なタイミングで俺の心のど真ん中に入ってくる。



『まだ機嫌悪いだろうなぁ、どうやってご機嫌取りしますかねぇ〜』



俺が起きていることに気づいていない北山は、またこうやって余計なことを言ってくる。

こういうところ、ほんと嫌になる。



『俺だってさ、できるなら連れていってやりたかったよ。
でも…そんな鼻声してる奴をさ、この寒い中人混みになんて連れて行けないだろ』



それこそ本格的に風邪引かせちまうよ、と…甘やかすように語りかけてくる。



『ごめんな、お前楽しみにしてたのにな』



自分でも、まだ自覚症状はなかった。
それくらい些細な不調を、北山は俺よりも早く気づいていた…。
しかも俺が気づけないくらいの、北山なりに俺を気遣ってくれての行動だったなんて。



目頭がどんどん熱くなる。
少しでも気を抜けば涙が溢れてしまいそうで、でも耐えるなんてできそうになかったから起き抜けの欠伸に誤魔化すことにした。



「あ…」
「んは、おはよ」



北山はまんまと騙されてくれたようで、笑いながら涙の線を親指で拭ってくれた。



「来てたんだ…」
「ん?うん、まぁね」



長いこと同じグループで切磋琢磨してきた俺たちは、互いのことなどもう何だって分かっている気になっていた。



「…イルミネーション、行きたかったのに」
「まだ言ってるし」



それが恋人という立ち位置が追加されてからは、空回りすることの方が多い。
もしかしたら知っていることの方が少ないんじゃないかって、自信をなくしてしまうこともたくさんある。



「ほら、今日の特集これかららしいぜ。
ここ、お前が行きたがってたとこだろ?」
「分かってないなぁ、こういうのは生で見るのが感動するのに」
「寒いからやだ」



けれど、知っていることが少ないのならこれから知っていけばいい。



「ほら、あったかくして一緒にここで見ようぜ。
お前の好きなアッサムティー淹れてやるから」



そう言いながら慣れた足取りでクローゼットから愛用のブランケットを取ってきてくれて俺の身体に巻きつけるのも、紅茶の置き場所に迷わないのも、この関係になったからこそなのだから。

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設定タグ:北藤 , キスマイ , 短編集   
作品ジャンル:タレント
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ひろ(プロフ) - 絢音さまご返信ありがとうございました^_^ 今は過去の別サイトは紹介されてないのですね。それでは新作がアップされる機会を楽しみにしておりますね(o^^o) またご迷惑でなければコメントもさせてください。お忙しいところ、ご連絡くださりありがとうございましたm(_ _)m (2021年5月12日 21時) (レス) id: 88642e1cbe (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ひろさん» ひろさん、初めまして(^^)いつも作品読んで下さりありがとうございます♪1ページごとにお星様〜、そんな事言ってくれるの初めてです!とっても嬉しいです(^^)実は歴長いですが、過去の作品は別サイトにあり今はご案内していないんです。お気持ちだけ頂戴しますね(^^) (2021年5月12日 21時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 1ページごとにお星様を押すことができたら良いのに。そしたらぜんぶのページでお星さま押します。たびたびのコメント、失礼しました^_^ (2021年4月26日 15時) (レス) id: e1b1489f48 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ - はじめまして。作品いつも楽しみにしています^_^絢音さんの作品の登場人物がみんな優しくて魅力的で、温かい気持ちになるので、とても好きです。他にも作品をお書きになられていらっしゃいますか?可能であれば拝見したいですm(_ _)m (2021年4月26日 14時) (レス) id: e1b1489f48 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» ふふふ、ほんとは怖いままで終わらせようとしてました(小声)たまには思い切りなバッドエンドも書きたいと思いつつ、誰得なんだ?と控えてますw。でも最後の描写少なかったかなー、もう1ページ頑張ってもよかったかなぁーなんて沸々思ってきてます(*゚▽゚*) (2021年4月2日 22時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絢音 | 作成日時:2019年11月3日 23時

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