うれし涙

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「ニカね、明日北山とわたに謝りたいって言ってた。
聞いてあげてくれる？」
「当たり前だろ…」
「わたもね、休憩入った途端俺の腕掴んで引き寄せてきてね、どうしよ太輔俺言い過ぎたニカちゃん絶対引き摺ってるって、すごいテンパってたよ。
…ふふ、お兄ちゃんたちはいつも憎まれ役かって出てくれるくせに、悪者になりきれないよね」
「身内贔屓だよな…、許したらいけない事もあるのに」
「それでいいと思うよ。
もう子どもじゃないんだし、反省すべきところはちゃんと…分かってると思うから」



だから、落ち込まなくても平気だよって、俺の目を真っ直ぐに見つめながら藤ヶ谷は言った。

何だ…、やっぱりこの話がメインだったんじゃないか。
おかしいと思ったんだ、だって藤ヶ谷が俺とサシ飯行くときはいつも、何かしら大事な話がある時だから。



「きたやまの、そうやって俺らの為にわざと嫌われ役かって出てくれるとこ、好きだよ。
だってそれは、俺らをすごく大切に思ってくれているからだって…ちゃんと皆にも伝わってるからね？」



俺は、メディアで明るく社交的に魅せる部分が多い分、素は割と落ち着いている。

こんな風に、自分の発した言葉とかを後々まで引き摺って考え込んでしまったりする事もある。
全然しっかり者なんかじゃないんだ。
こんな風に藤ヶ谷に引っ張り上げてもらって、漸く立って居られるんだなってつくづく思う。



藤ヶ谷も藤ヶ谷で世間の定着してしまっているイメージと実際はまるで違う。

一人でクールに本を読んでいる事もあるけど基本的には喋るのが大好きだし、誰よりもメンバー思いだし、確かな優しさを持ってる。
顔はかっこいいけど中身は全然キングなんかじゃない。
ポンコツなとこ多いし、天然だし、下ネタ大好きだし、絵めちゃくそ下手だし。



でも、俺はそういう人間味溢れる藤ヶ谷が大好きだ。



最近はそういう部分も少しずつ見せることができていて、ファンの子の間ではとっくに周知の事実になっている。
これは一般層に広まるのもそう遠くはないだろうなと思いつつ、でも万人に知られるのはなんだか我が子を遠くにやってしまうみたいで切ないなーなんて変な気分にもなる。

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