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「あの」

涼「ん?」

「ありがとう」

涼太くんはふっと笑った。

そしてまたあの目で私を見た。

優しさに満ちた、

まるで愛しいものを見守るようなあの目。

いつもは普通に同じ学年のちょっとお調子者の

男の子なのに。

時々すごく年上の男の人のように

私を見るからどぎまぎしてしまう。


涼「こちらこそ」

涼「Aが衣装係になってくれて、よかったよ。
……あとさ、A……」

次の言葉を言うべきか言わないべきか、

考えるような間があった。


「?、」


涼「……Tシャツの写真、すごいのよろしく」


言いかけていたことは、

違うような気がしたけど

涼太くんが笑顔だったからわたしも笑った。


「あんまりハードルあげないで」

涼「いや、期待する」

「やめて、プレッシャーなる!」


やれやれという顔でため息をつくと、

突然私の頭をぐしゃぐしゃっとしてきた。

「ちょっと!」

抗議の声をあげるわたしに、涼太くんは真剣な顔で言った。

涼「自信もって!Aならできる。っていうか、
Aにしか出来ない」

その言葉にはっとした。

涼「俺はAならできると思うから、言ってるんだからな」





まっすぐ見つめられて、うなずかないわけにはいかなかった。

涼太くんは「じゃあな」

と言って帰っていったけれど、

わたしらそのあと少しの間ぼんやり

立ち尽くしていた。





しばらくして、はっと我に返り、

涼太くんがぐしゃぐしゃにした頭をなんとかととのえる。

あのとき感じた手の重さが、

涼太くんの期待の大きさなのだと思った。




『Aにしかできない。』

『Aならできる。』



涼太くんが言ってくれた言葉が私の心に

じわじわと染み入ってくる。

わたしならできるって、

本当にそう思ってくれてるのかな?

衣装係を引き受けたわたしへの

リップサービスかもしれない。

でも、


それでもいいや、


とそう思えた。


こんなふうに誰かに期待してもらえるなんて

初めてだった。

ほんの少しでも、

涼太くんの期待に応えたい。

わたしは強くそう思った。

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作者名:ゆーか | 作成日時:2017年10月16日 19時

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