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夏恋が当然のように、自分の隣のいすに
座るように手招きし、自由行動でどこを
回りたいかたずね始めた。
みんながそれぞれ好き勝手なことを言うのを笑顔で
聞きながら、わたしは立場が逆転したことを感じた。
幼稚園のとき、私の手をつかんで、
ほっとした夏恋。
今はわたしが夏恋の手を離せない。
……そこまで考えて、わたしは小さいため息をついた。
なんでだろう、
最近考え方が少し卑屈になってる自分がいる。
考えすぎちゃいけない。
今、うまくやってるんだから、
それで充分でしょう?
もう一度つきかけた小さいため息をのみ込んで、
気を取り直そうと顔をあげたとき、
渡り廊下の窓に桜の花びらが一枚ぺたりと
張り付いていることに気づいた。
窓拭きなんて毎日してるわけじゃないから、
少しほこりでくもっている薄汚れた窓に
張り付いているひとひらのピンクがけなげに思えて、
わたしは制服のポケットからスマホを取り出した。
右手に持っていた重い紙袋を左手に持ち替えて、
スマホをかまえると、
バランスがくずれやすくて、ぶれないように
注意しながらシャッターを切った。
カシャッ、カシャ。カシャカシャ。
と、突然誰かに紙袋を取り上げられ、
左手が軽くなった。
ふんばっていたわたしは逆にバランスを
崩してよろめいてしまう。
涼「あ、ごめん」
紙袋を持ってくれたのは片寄涼太だった。
わたしはあわててスマホをポケットにしまった。
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作者名:ゆーか | 作成日時:2017年10月16日 19時