film37 写真 ページ38
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ミーティングルームから飛び出し、帝国学園へと向かったA。
(相変わらず凄い外観だな……)
目の前に立ちはだかる、巨大な要塞のような建物を見上げ、Aは思わず顔を引き攣らせてしまう。
広大な校舎へと続く、長い中庭を歩きながら、Aは、カバンのストラップを強く抱きしめる。
今日は、帝国学園に雷門のデータの資料を渡しにきた。というのは建前で、久しぶりに風丸の様子を見に来たかったのだ。
「風丸さん……元気かな……」
「誰が元気だって?」
突然、後ろから降りかかった懐かしい声。
前と変わらない優しいその声に、Aは俯かせていた顔を勢いよく上げると、ゆっくりと振り返った。
「風丸さん!」
「久しぶりだな、雪乃」
振り返った先にいたのは、帝国学園のユニフォームに身を包んだ風丸の姿だった。
優しく目を細めて笑うのは、1年前と何ら変わっていない。
Aは、直ぐに彼のそばに駆け寄ると、嬉しそうに声を弾ませた。
「お久しぶりです!」
「急にどうしたんだ?」
「あ、実は……」
まるで子犬のように此方を見つめる彼女に、風丸は
思わず笑みを零すと、腰に手を当てたまま、問いか
ける。すると、Aは、カバンの中から資料の入っ
たクリアファイルを取り出し、彼に手渡す。
「これは?」
「現在の雷門の資料です。帝国には、必要ないかとも思ったんですけど、一応仕事なので」
少し困ったように笑い頬を掻きながら、Aが言うと、風丸は微笑んだ。
「ありがとう」
控えめなその笑みは、とても綺麗だったが、何処か
悲しげだった。何だか、今にも泣きだしそうな
そんな目をしていた。
「風丸さん……大丈夫ですか?」
ー禁句だとは分かっていたー
ー彼は、心配されるのが苦手な人だからー
だけど、それでもAは、目の前で笑う彼の姿が、
あまりに辛そうで、黙っていられなかったのだ。
「大丈夫だよ、俺は。雪乃は?」
風丸はAの言葉の意味を理解しながらも、するりと交わすと、話の矛先を彼女自身へと向けさせる。
Aは、少し哀しそうに微笑むと、黙って頷く。
「大丈夫です。だって、私達には仲間がいるから」
バインダーから、写真を取り出し、彼に見せながら、Aは囁いた。
「ああ、そうだったな……」
風丸も、そっと写真を取り出すと、思い出したように呟いた。
風に靡くふたりの長い髪の隙間から見える、端正に整った顔は、何処か寂しげだった。
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シロナ(プロフ) - 愛音さん» リクエストありがとうございます!水神矢くんは、対王帝戦の前後で、雪乃ちゃんを精神的に支えます。絡みは、少し先のお話で予定しているので、お待ちいただければ幸いです! (2019年3月20日 22時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
愛音(プロフ) - 水神矢成龍くんとの絡みをお願いします。 (2019年3月20日 21時) (レス) id: 95fbe585e8 (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - あんさん» あんさん、リクエストありがとうございます。鬼道さんとは、星章対王帝の試合で沢山絡ませる予定です!せっかくの幼なじみ設定なので、日常での絡みも増やしたいと思っています(*´艸`) (2019年3月20日 11時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
あん - 鬼道さんとの絡みをお願いします。( ̄^ ̄ゞ (2019年3月20日 10時) (レス) id: 8ea3c89cfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sirona | 作成日時:2019年2月28日 20時