film12 嘘 ページ13
✤
頭上で聞こえた今にも泣きだしそうな野坂の声に、Aは空気の抜けるような声を漏らす。
｢どうしていつも君は無理して笑うんだ。僕の前でくらい……｣
｢野坂く……｣
何時になく感情が高ぶり、留まることを知らず、次から次へと言葉が溢れてくる。腕の中の少女が困惑したように、名前を呼んでいる。
ーちがうー
こうさせたのは他でもない僕自身だ。
彼女が無理をしているのは、僕や茜さんでなくても気付くほどだ。それに気付いていたのに、気づかないフリをしていた。本人も僕も。
大丈夫？と尋ねれば、決まって彼女は笑って大丈夫と言う。例え、本当は辛くて仕方が無くても。
誰にも本当のことは言わずに、1人で抱え込んでいる。
だけど……彼女の……あんなに辛そうな笑顔は見た事が無かった。
無理をさせている自覚はあった。だけど、本当に感情を隠すのが上手な人だから。本当の気持ちを確かめようとしても、いつもするりと交わされてしまう。
｢ごめん……ごめん……｣
Aを抱きしめたまま、力ない声で謝る野坂。
たった一言なのに、その言葉の意味を理解した途端に、Aは唇を震わせると、顔をクシャりと歪め、野坂の銅板に顔を押し付けた。
｢野坂くんのせいじゃない！灰崎くんのこと私に言わなかったのも、本当は私がそれを知ったら悲しむと思ったからでしょ？分かってるよ！｣
｢Aちゃん……｣
シャツをクシャりと握りしめ、叫ぶようにして言うAの言葉に、野坂は目をゆっくりと開くと、か細い声で彼女の名前を囁く。
｢辛くないって言ったら、嘘になる。みんなを騙しているみたいですごく辛い……だけど……｣
｢だけど……？｣
｢私より野坂くんや茜さんの方がずっと辛いから｣
頭をハンマーで殴られたような衝撃。頭は大して痛くないが、それよりも心が。針で心臓を射抜かれたようなそんな切ない痛みがして、野坂は思わず声を漏らすと、目の前のAをつよく抱きしめた。
｢キミはいつもそうやって人の事ばかり……｣
｢野坂君だってそうじゃない……私たち似たもの同士なのかもね｣
自嘲気な笑みを浮かべてAが言えば、野坂も同意するように微笑んだ。
｢気持ちが分かるから……今日だけは見なかったことにしてくれるよね？｣
｢ああ、大丈夫。止まない雨はないよ、いつかきっと晴れるから｣
白い肌を伝ったしずくには気づかないフリをして。
だけど、これは優しい嘘だから。せめて、今この瞬間だけでも、彼女が明日も強く生きていけるように。
僕は彼女にまた嘘をつく。彼女も僕に嘘をつく。
きっとこれからも。
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シロナ(プロフ) - 愛音さん» リクエストありがとうございます！水神矢くんは、対王帝戦の前後で、雪乃ちゃんを精神的に支えます。絡みは、少し先のお話で予定しているので、お待ちいただければ幸いです！ (2019年3月20日 22時) (
レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
愛音(プロフ) - 水神矢成龍くんとの絡みをお願いします。 (2019年3月20日 21時) (レス) id: 95fbe585e8 (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - あんさん» あんさん、リクエストありがとうございます。鬼道さんとは、星章対王帝の試合で沢山絡ませる予定です！せっかくの幼なじみ設定なので、日常での絡みも増やしたいと思っています(*´艸`) (2019年3月20日 11時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
あん - 鬼道さんとの絡みをお願いします。(￣^￣ゞ (2019年3月20日 10時) (レス) id: 8ea3c89cfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sirona | 作成日時：2019年2月28日 20時
