検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:6,329 hit

20 ページ20







「斑目」


陽射しが眩い十四時半。
眠そうな顔のイザナが竜胆の隣にいた斑目を抑揚のない声で呼んだ。
木陰で涼んでいた横浜の赤い悪魔、天竺の幹部らはイザナの声に顔上げ、呼ばれた斑目をチラと見た。斑目は「なに」とイザナを見つめ返す。なんだろうと不思議そうな顔だった。



「ついてこい」



そう言って歩き出したイザナに「え」と斑目は驚いた。どこ行くの、え何なの一体。少し怖かったけど斑目は狂犬の皮を被った子犬なので渋々後を着いていくのだ。他の幹部らは何だろと首を傾げたが今回はお留守番である。



生ぬるい風の中、隣に歩くイザナをチラチラと伺う斑目は「何かあんの」とチマイ声で声をかけた。イザナはジと前を見つめたまま「着いてからのお楽しみ」と答えた。意地の悪い答えだと思う。




斑目は何が起こるか分からないまま目的の場所に連れていかれるのだ。嫌な所じゃないといいけど。廃墟とか墓場とか。



イザナに黙ってついて行くと大きな日本家屋が現れた。見覚えしかない家。イザナの家である佐野家だ。何だ、家か。斑目はホッとして少し顔を緩めた。そのままスタスタとイザナの背中を楽な気持ちで見つめながら「お邪魔しマース」と中に入ると



「イザナ!」



焦った声と共に小さな塊がイザナに飛びついてきたのだ。その姿は弾丸の如し。イザナは難なくそれを受け止めると迷惑そうに眉を顰め「邪魔」と蹴り飛ばした。小さな弾丸はイザナの弟である佐野万次郎である。




彼はいつもの独特の雰囲気をかなぐり捨てヤバイヤバイと慌てた様子である。イザナの肩越しに万次郎を眺める斑目はその瞬間悟る。あ、多分これマータ怪奇案件だ、と。




万次郎が取り乱すのはお気に入りのものが壊された時とちょっとヤバめの怪奇案件の時のみである。お気に入りのものが壊されたら頬に空気を入れて拗ねるのだが今回は小さな汗を飛ばしている。後者だ。うわ、俺帰りてぇ。そんな斑目の肩にポンと優しく手が乗った。




「役に立てよ」



ニコと笑う我らが大将。斑目は「うす」と小さく、とても小さく呟いた。これは決定事項である。大将の言葉は絶対。YES以外はないのだ。斑目の気持ちをつゆ知らぬ万次郎は「早く早く!」とイザナの斑目の手を引っ張った。





連れられた先にはソファーの上でグッタリとしている髪の長い人物。その近くには「大丈夫か?」「おい」と声をかけ続ける場地の姿があった。髪の長い奴はピクリともしないようだ。

21→←19



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

月野 - この手の話、今まで無かったので新鮮でした!とても面白かったです!!更新楽しみにしています! (2022年10月6日 2時) (レス) @page19 id: dccd327fc0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 軍時さん» まじですか?ありがとうございます!! (2022年9月25日 22時) (レス) id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 武道可愛いですねw。空になったペットボトルまだ持ってるなんて…。竜胆は武道になにをあげるんだろう。気になります!斑目の設定考えた主さんが天才すぎる!! (2022年9月25日 22時) (レス) @page19 id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 特殊な訓練を受けている彼らだからこそ出来る対処法なので実際には…です笑なのでたけみっちがペットボトルをブンブン!と降っても除霊は出来ないことになりますね、かわいいですね🌼楽しいと思って貰えてとても嬉しいです🥰コメントありがとうございました! (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 大丈夫ですよ〜!ゆっくりにはなりますが更新頑張りますね💪 (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月13日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。