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「………ん、安田くん?」


「へっ?なに?」


「手、まだ痛むの?」


「やっ、大丈夫やで?」


「そう。ならいいんだけど…」

卒業式が終わって、久々の学校

金曜日なら音楽室が借りられるとのことで、毎週金曜日に、彼女にピアノを見てもらう事になった

学校にいるのに、卒業したからお互い私服で

ちょっぴり、違和感


たった30分のレッスンなのに、落ち着かない

「はぁ、よかった」


「ん?何が?」


「右手。本当に大丈夫そうだから」

彼女が心配してくれてることが、何だかくすぐったい



「深谷さんは春休み、何してんの?」


「春休み?まだ始まったばっかりだけど…」


「ははっ。ま、まぁ、そぉやねんけどっ」

落ち着け、オレ〜


「出かけたりとかは?」


「う〜ん、特に予定はないけど」

平常心、平常心。いつも通りに冷静に…


「ほんなら、来週の土曜日とか、ヒマやったりする?」


「ん〜、うん。ヒマ、かなぁ?」


「実はな?姪っ子のピアノの発表会があって、見に来て欲しい言われてんねんけど、ひとりで行くのが小っ恥ずかしくて。よかったら、深谷さん、付き合ってくれへんかな?って」


「えっ?」


「えっ?も、もしかして、忙しい?」


「ううんっ、全然っ」


「そ、そう?ほな、一緒に、ええかな?」


「うん…。お願い、します」


「じゃあ、また詳しくは連絡するから」


「うん。わかった」

………って、俺 中坊かっ

何でもっと、こうスマートに誘われへんの?

オドオドしてて、かっこ悪い



「はぁ〜……」

家に帰って、ガックリ肩を落とす


今まで、こんな事なんてなかった
女の子と話すのも、誘うのも、緊張なんてした事なかったのに

きっと、“本物”やから

深谷さんへの想い、これまでと違って


本気の、本物



「よしっ、がんばろっ」




3月14日

いざ、勝負!

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作者名:ちか | 作成日時:2020年2月14日 13時

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