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「……喧嘩したのかい?」
「誰とだよ」
「Aの目元、腫れていたよ」
「……」
 
 サングラスを一度机上に置き、仰いだ顔の目元に腕を乗せた。蛍光灯が痛すぎるほど眩しいから。さっき会ったばかりだが顔なんて見れるわけがないから知らない。アイツのことだし蜂に刺されたみたいにパンパンに腫れてんだろうな。そうさせたのが自分だと分かっていてもなぜか無性に見たくなってきた。

 それはそうとして傑のこの察知能力の鋭さなんだよ。目元が腫れてるだけで俺と喧嘩したとか迷惑すぎる誤解でイラついたけど完全否定ができないからめちゃくちゃタチが悪い。


「……喧嘩じゃねえけど」
「けど?」
「…………アイツが着替えてるときに鉢合わせした」
「……悟の顔色が優れない理由も分かったよ」

 「その様子だと寝れていないね」。おーそうだよ2秒以上目瞑ったらアウトだからシーツの上でずっっっと胡座かいてたんだよここ来るまでな。どんだけ昨日の夜俺が不完全燃焼で苦闘してたか分かってんのか傑……だからアイツも俺と同レベルの寝不足感じてなかったら、とりあえず一発殴るか。俺だけここまで悶々としてたのが馬鹿らしいし。……うわ駄目だ思い返すな俺!!! 無心でいろ!!


「……てか泣いてたのか」
「今日中に謝っておきなよ」
「は!? なんで俺!」
「原因がどうであれAを泣かせたんだから。あと女性に恥をかかせるのはよくない」
「え"ー……」

 マジか……俺が……、まあ確かにあんな反応してたアイツが自分から謝りに行くとも思えない。


「……「鍵かけてなかったお前が悪いとはいえじっくくり見つめてすみません」?」
「状況を悪化させたいのかい?」
「あと返そうと思ってたDS壊したと思う」
「弁償だな」

 結局最後まで苦労するのは俺かよ。DSって中古じゃなくて新品じゃないと駄目だよな……ゲームカセットもなんか買っとくか? アイツどうぶつの森とかめちゃくちゃ楽しそうにプレイしそうだな。


「で、悟?」

 切れ長の細目が「どうするんだ?」と言いたげに返答を促してくる。全部コイツに誘導されたような気もするけどそうでなかったら俺は考え込みすぎて知恵熱を出していたに違いない。仕方がねえからバリバリ君奢るくらいの感謝はしてやる。



「……放課後」
「健闘を祈るよ」
「大袈裟なんだよ」
「顔が赤いぞ?」
「うっせえ!」


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作成日時:2020年12月30日 22時

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