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待つ話


 霞む視界を何度か瞬くと次第に自室の壁が鮮明に現れてきた。……右の腿が重い。

 眠気の残る両目を伏せると、若干乱れた髪の毛に隠れた横顔。ん? いつからコイツと昼寝してたっけ。


「……覚えてねー」

 昼寝の割には深い睡眠すぎた。起きろ起きろと肩を揺さぶるが そうだコイツめちゃくちゃ寝起き悪かったわと気づいて慌てて手を引っ込める。まだ死にたくねーよ。


「……ーー、」

 細い寝息から漏れた小言。腹側に向いている顔がほんの少しだけ緩んでふむふむと何か紡いでいる。──ボトル、バトル……いや違う。悟、だ。

 絡まっている髪束を右手でそっと梳きはじめる。柔らかくて細いから、縺れているわけだ。上へ下へと手櫛するたびにシャンプーの匂いが指まわりにまとわりついていって、ただそこまで悪い気分ではないから動かす手は止めない。

 どんどん引っかかりのなくなっていく髪を眺めて俺が微笑んでいることは誰も知らない。
 

「ん……」

 薄く開いている唇。随分安らかそうな顔で寝ているからこうして見守っているが目の毒だこれは。寝起きが最悪だから襲おうにも襲えない。あーもう、なんちゅー生殺しだよ。


「……早く起きろよ」

 横腹に添えた手を身体の線に沿って撫で下げて、腰のあたりまで行く。そこから指の腹で背骨の上を頭の方向に進ませていくと、人工的な凸を見つけたので服越しからそのホックを外してやった。この程度では起きないからへーきへーき。



「さて、ここからどうしよっかな」

 術式張ったから何されても痛くないから、なんでもし放題なんだけどな。……一週間口聞いて貰えなく代わりに。


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作成日時:2020年12月30日 22時

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