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試される話
「……なにしてんの」
「……ごじょ、」
in 共有スペース。仄かに火照った横顔を屈んで覗き込み、膝上に置かれた箱を見やる。呪霊に襲われていた一般人を助けたらお礼にチョコ貰ったとかなんとか言ってたような気がしないこともない。箱の中に入っているのは仕切りだけでチョコなんて一つも無かった。摘んでやろうと思ったのに完食かよ。22時過ぎにチョコ食うって……デブ活してんのかコイツ?
「……たべる?」
「全部食ってんだろ、熱あんの?」
「んー……?」
「寝ぼけんな」
あ、待て。まさかこのチョコ……
「お前これウイスキーボンボンじゃん」
空箱を拾い上げて側面を見ると秀麗な筆記体で"Whiskey bonbon"の文字が。こんなんで酔ってんのかコイツ。
「……弱」
弱そうなイメージは前からあった。俺はめっちゃ強い自信あるわ、酒飲んだことないけど。
時計を見る。22時47分。いつもなら普通に起きてる時間だがこの状態だと寝るしかすることないだろう。
「部屋まで送ってやるからもう寝ろ」
風邪引くし色々とよくない、色々とな。色々。
さっきからガン見してくるトロトロにぽやけた両目の視線に気づかないフリをして右の手首を掴んだ。余計なこと言わないうちにベッドに投げ捨てて帰ろ。
「……五条もいっしょに?」
「…………な わ け あ る か」
「なぁんだぁ」
「ほら立て」
「立てるかな? ぇへへ……」
はーーーーーーもうお前ほんとふざけんなボケ不謹慎すぎるにも程があんだろ馬鹿野郎。ギャップ萌えとかそんなレベル越えてて頭爆発しそう。そうだ傑だと思ってればいいんじゃね? 傑が「立てるかな?(上目遣い)」とか言ってんだぞ、あーよし萎えてきた萎えてきた……。
「五条におんぶしてほしいなぁ」
「なんで」
「……言わなきゃだめ?」
傑フィルターが一瞬で消えた。これ襲っていいの? 場所がここじゃなければ速攻で押し倒してるんだけど?? え、俺ら以外入れない帳張ってさー……えー……?
……いじめたくなってきた。
「言わなきゃおんぶしてやんねーから」
「えっ? やだ」
「じゃあ俺部屋帰るわ」
「それもやだ……」
色付いた両頬を膨らませて目元に涙を溜めている。わざと背後を向くと手首を両手で弱く掴まれた。
お前さぁ、ほんと……。コレが普段暴言吐きまくりの女子って信じられる? 俺はまだ無理。
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作成日時:2020年12月30日 22時