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「白湯介、助けられなかったな…………」

「ああ、道理で伝達が遅かった……」



白湯介(さゆすけ)とは、Aさんの鎹鴉のことだ。

あまりに忠実なもので、皆、自身の鎹鴉を白湯介にしたいと言っていた時期があったくらいだ。

しかし、それはAさんと白湯介の絆あってだということを、俺は知っている。

_____鴉にまで情けをかけるAさんの背中が、酷く寂しい。

まだ完全に怪我が治っていないからか、よろけてしまうAさんもまた、珍しかった。



「まだ寝かせてもらってて良かったんじゃ、ないですか…………怪我、軽くないですよ」

「いや、いいんだ…………寧ろ、寝過ぎた位だ……」



Aさんはそう言うが、やはり、足元がふらついている。

_____俺が屋敷を訪れて、Aさんは直ぐ、帰路に着くと起き上がった。

娘は依然として、引き留めようとしていたが、Aさんは羽織を掴んで、頭を下げると、屋敷を去った。

というか、あの娘…………絶対Aさんに、気、あっただろ。



「…………Aさん、たぶらかしたり、してないすか」

「たぶらかす……?誰を」

「手当ての娘」

「………………………まさか!」



はははは、と、Aさんは珍しく声を出して笑った。



「笑うとこすか……」

「いや、だって…………」



やっと笑いが落ち着くと、Aさんが可笑そうに俺を見つめる。

月の光が、黒髪に光って、艶めいた。



「お前、可愛いな」

「…………………………は?」



何を言うのかと思えば、可愛い、だァ!?

頭をくしゃりと撫でられる感覚。

ずくずくと、心臓が痛い。

俺はなんて返事をすればいいのか思い付かず、



「…………白湯介、餓鬼が埋めて弔ってました」

「本当か?それなら…………よかった。お礼、言い損ねたな」



そう言って、おぼつかない足取りで前を歩いていくAさんを、月と照らし合わせていた。

…………クソ、心臓が痛ェ。





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mikitty(プロフ) - 好きです!!!! (2022年12月25日 13時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - やっぱり何回見ても最高だなぁ、ぐへへ(( (2020年12月19日 14時) (レス) id: 4fc468f2f2 (このIDを非表示/違反報告)
柴犬(プロフ) - 素敵な作品ですね...、愛情表現や色気のあるシーンがすごく好きで一気読みしてしまいました。他の作品も読ませて頂きたいのですがパスワードというのはどちらで伺えばいいのでしょうか...? (2020年5月30日 9時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ohagi - めっちゃ最高でした。自分も腐ってるのでBLの方がよけい萌えました! (2020年3月31日 14時) (レス) id: 8e8ba22e4c (このIDを非表示/違反報告)
ひつじマイケル(プロフ) - お疲れ様です!読んでいてとても面白かったです!よろしければこれの短編集を読んでみたいです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 37a32601d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たつき | 作成日時:2020年2月29日 20時

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