１３ ページ14
.
「行ってくる」
「Aさん、お気を付けて。カナヲを、よろしく頼みます」
「ああ……というか、寧ろ俺の方が助けられる気がする」
胡蝶が、Aさんを見送っていた。
ガキじゃあるまいし、泣くまではいかないとしても、もし俺があの場に居たら、Aさんを引き留めてしまうに違いない。
俺は草影で胡座をかいて、Aさんと胡蝶の話し声を聞いていた。
Aさんのいないこれからを、どう過ごそうか、ぼーっと考えていると、いつの間にか会話が途切れていることに気づく。
しまった、もう出発してしまったか……慌てて立ち上がると、ゴッと鈍い音がして
「った……」
「は、Aさん…………？」
顎を擦ったAさんが立っていた。
「急に立ち上がるか……」
「さーせん……」
「いや、いいんだけどな」
俺の頭が顎に当たったらしい。Aさんは、顎を擦りながら、何やらゴソゴソと取り出す。
「これ、実弥に預けておこうと思ってな」
「なんすか……これ」
手のひらに落とされたのは、少し光沢のある、鎖……みたいなもの。
「母の形見だ、戻ってくるまでなくすなよ」
「……！…………っす」
Aさん…………分かっていたのか。どうしようもない嬉しさが込み上げる。
「じゃあ、また何時か」
今度こそ、Aさんは背を向けて歩いていく。
カナヲとやらの隣を歩くAさんは、黒髪を赤い紐で高く結わえているので、似たような格好に見えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mikitty(プロフ) - 好きです！！！！ (2022年12月25日 13時) (
レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - やっぱり何回見ても最高だなぁ、ぐへへ(( (2020年12月19日 14時) (レス) id: 4fc468f2f2 (このIDを非表示/違反報告)
柴犬(プロフ) - 素敵な作品ですね...、愛情表現や色気のあるシーンがすごく好きで一気読みしてしまいました。他の作品も読ませて頂きたいのですがパスワードというのはどちらで伺えばいいのでしょうか...？ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ohagi - めっちゃ最高でした。自分も腐ってるのでBLの方がよけい萌えました！ (2020年3月31日 14時) (レス) id: 8e8ba22e4c (このIDを非表示/違反報告)
ひつじマイケル(プロフ) - お疲れ様です!読んでいてとても面白かったです!よろしければこれの短編集を読んでみたいです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 37a32601d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たつき | 作成日時：2020年2月29日 20時
