不道徳な ひと【緑】vol.2

・055 ページ5

「Aちゃんさ、今度 合コンあるんだけど、一緒に行かない？」

同じ夢に向かって集まった子達だから、みんな忙しくしてるんだけど、ごく稀に、専門学校卒業って肩書きだけの為に通ってる子もいて

「ごめんね？その日は予定があって」

正直、断るのも面倒くさい


「付き合い悪いなぁ？彼氏、いないんだよね？」


「別に、今 彼氏とか いらないから」


「それ、寂しくない？」


「別に？」



別に、寂しくなんかない


一時の感情に任せて、心から好きじゃない人と付き合う事が、どれだけ不幸せな事なのか、どんなに相手を傷つける事なのか

それを身に染みて経験した私に、今は寂しいなんて感情はない

ただ目の前の目標に向かって、突き進むだけだった


そして、月日が過ぎ

「お前らの方が、先に社会人とか…やっぱ、信じられへん」


「なんでっ？」


「でも、確かに錦戸くんの方が、しっかりはしてるよね」

美菜は、実習に行った幼稚園で、『良かったら、うちで働かないか？』と言われて、即 就職が決定した

私も、何社か受けたひとつ。ホテルのフレンチレストランに就職が決まって


今日は、私達の就職祝いだと、3人で久しぶりに集まった

「あ〜ぁ。俺なんか、3年なったら教育実習あるもん。イヤや〜」


「でも、教育実習って、母校に行くじゃない？知ってる先生ばっかだから、多少は緊張しないんじゃ…」


「俺、行かへんもん。あそこの学校」


「なんで？折角 西崎先生に会えるのに？」


「おん。俺さ、ちゃんと免許とって先生になってからしか、彼女に会わへんって、決めてんねん。せやから、うちの近くの高校に、もうアポとってあるし」


「錦戸ってさ、本当にバレないよね。そういうとこ、凄いって思うよ」


「お前は、どうなん？」


「私？


「2年間、男 作らへんかったってことは、大倉先生のこと、ずっと想ってるからっちゃうん？」


「どうかな？わからない」


「就職先 決まりましたって、会いに行ってみたら？」


「……ん〜ん、いい。なんかね？よく分からなくって」


「うん？」


「今のこの気持ちが、“好き”って気持ちなのか、“懐かしい”って想ってるだけなのか。
大倉先生のこと、思い出したりするけど、それが恋愛感情で思い出してるのかどうか、いまいちピンと来なくって」


「だから、それを会いに行って確かめるんやろ？」


「……やっぱり、いいよ」



多分このまま、ゆっくりと思い出に変わって行くから

・056→←・054

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す