す れ 違 い 双 子 【赤羽カルマ】

すれ違い.2 ページ3

「あ！カルマくんだ！おはよ！」


「おはよ〜茅野ちゃん」


「あ、カルマくん！今日停学明けの女の子が来るらしいよ！まだ来てないけど！」



そう明るい笑顔で伝えてくれたのは、このクラスのムードメーカーみたいな存在の茅野
“停学明け”という言葉に少しだけ心臓が飛び出るような感覚に陥った


今日の朝から考えていたAも、停学になっているはずだった
停学になった生徒は、停学明けには必ずこのE組に行くことが決められている


自分がそのいい例だ
停学は、基本的に素行不良の行き過ぎや、過度な重大校則違反など、その時の担任が理事長に申し立てて、それが認められた時にされる


Aも何らかの理由で停学になった
それがどうしてかは、俺もよく知らない


それにしても、まだ来てないとはどういうことなのか
俺が言えることでもないけど、今はもう4時間目の体育の時間だ


運動場が見えた時に、山道に一番近いところで休憩していた茅野ちゃんが、俺に話しかけてきてくれたのだ




「俺の時みたく、体育が終わった頃に来るとか？」


「えー？まさか！」



そんな会話を笑いながらしていた
そんなことあるわけないって分かっている
Aが本当に今日ここに来るかも分からない
だけど、Aが来ることを信じて、待っていたい
わがままを言うなら、俺の時と同じように来てほしい


変な願いだけど、誰にも言わなければいい
だってこんなこと聞かれたりしたら、寺坂あたりにバカにされるに決まってる



「おはようございますカルマくん
最近はちゃんと来ていたのに…今日は遅刻ですか？」


「あ〜…おはよ殺せんせー
ちょっと寝坊しちゃってさ〜」



風が吹いたかと思うと、いきなり現れた殺せんせー
今はもうせんせーのマッハ20にもだいぶ慣れてきた
…目で追えるようにはなってないけど



「ところでカルマくん、今日停学明けのはずの生徒のことなんですが…」


「…もしかしてそれ、Aのこと？」


「やっぱりカルマくんと知り合いでしたか？」


「うん、俺の双子の妹だよ
でも最近は家に帰ってこないし、俺からの連絡も全スルー」


「…そうですか
先生も、さっきまでカルマくんの様子見も兼ねて家に行ってきたんです
しかしそこはもぬけの殻で……」


「……勝手に入ったってこと？それ…
Aは、小学校の頃の友達の家を泊まり歩いてる」


「それはそれは……」




いつも通りのつぶらな目が、遠い目をしていたことを俺は気づいてしまった

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