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──そして、何やかんやで文化祭当日。

いつもは校則違反なメイクをして、髪を綺麗にセットして、衣装のドレスを着て。何だか、私じゃないみたい。

用意されていた鏡の前でくるりと一回転していれば、皆“かわいい!”と褒めてくれた。


ありがとう、と笑顔でその言葉に返すも、私の心は未だに先生のことで一杯だ。





(……皆からかわいいって言って貰えるのも嬉しいけど、やっぱり一番は……先生に、言われたい)


今日は、どこに居るんだろう。劇、見に来てくれるのかな。そもそも私がジュリエットをやるって知ってるんだろうか。……知らないだろうな、きっと。

今頃、いつものように化学準備室で珈琲を飲みながら本でも読んでいるんだろう。先生は、そういう人。



……そういう人だって、知ってるのに。どうして劇を見に来てくれるかな、って期待してるの。







「時間、まだ大分あるし……ちょっと屋上で風に当たってくるね」





クラスの子にそう告げて、私は教室を出る。

屋上への階段がすぐそこで良かった。この格好は人目を引いて良くない。教室を出ただけでこんなに見られてるし。



普段はあまり行かないけれど、私は屋上が好きだ。滅多に人は来ないし、静かだし。

ゆったりと流れてくる風に乗って、先生へのこの想いも流れて行けばいいのに。そんなことを思いながら、屋上のドアを開ける。


思っていたより風が強くて、髪を抑えながらパタンとドアを閉じる。

下を見てみれば、人が沢山いて。こんなに居るのか、と少し驚く。

この中の内の何人が、劇を見に来るんだろうか。そう考えると、少し緊張してきた。



それにしても風が冷たいな、と腕をさすっていると、ふわりと後ろから何かを肩にかけられた。

肩にかけられたのは、見覚えのある白衣。


え、と後ろを振り返ると。







「久しぶり、やな」







いつもと変わらない、優しい声で笑っている先生がいた。









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作者名:きゃろっと。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年10月3日 21時

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